確かに、昨年12月にリクルートワークス研究所が発表した「新卒採用見通し調査」では、10年卒者の新卒採用が「増える」と回答した企業の割合は8.3%となり、09年卒者の見通し調査と比べて9.7%減った。その一方で、採用が「減る」と回答した企業が8.9%増の15.7%になっている。
しかし、求人倍率が「1」を割り込んだ、かつての“就職氷河期”のような状況になるとは考えづらい。それというのも、バブル経済崩壊後の90年代前半に極端に採用を絞り込み、年齢構成をいびつにして苦しんだ経験が各企業にはあるからだ。先の調査でも採用数を「前年と変わらない」とする企業は全体の50.6%を占めている。
こうした状況のなかで高まっているのが学生たちの安定志向である。「単に大手企業だからということだけでなく、業績などもしっかりと分析したうえでの『安定』や『安全』志向が強まっている。また、業績を絞らずに広い視点から会社選びをしていることも特徴だ」とリクルートの岡崎仁美リクナビ編集長は語る。
一方では、第三世代の就活状況に対して苦言を呈する向きもある。「好きなことをしたいといいながら、何がしたいのか自分の軸が固まっていない。『安定しているから』という理由だけで志望先を選んだ結果、業種が金融、メーカー、小売りなどバラバラになっている。親に勧められて公務員を志望する学生も増えている。結局、就職しても『自分のしたいこととは違う』といって、数年のうちに辞めていく可能性が高い」と、ある就職アドバイザーは表情を曇らせる。
ゆとり世代の特徴として、ビジネスの基礎的素養ともいうべきコミュニケーション能力や課題発見・解決力が高い人材と、そうでない人材との格差拡大も指摘されている。実践的な人材採用・育成のコンサルティングで定評があるトライアンフの樋口弘和社長は、「その人材が入社後どれだけ伸びるかは、採用段階で8~9割が決まる」と断言する。人事担当者の肩の荷はますます重くなるばかりだ。