五輪ボラを「労働」と捉える学生たち

こうした学生たちの多くは独自にオリンピック・ボランティアに関する情報に接していた。とりわけテレビやネットニュース、SNSを介して批判的な意見が流通していたことは彼らに少なからず影響を与えていたようだ。否定派の多くがネット上で話題となった「やりがい搾取」や「ブラック・ボランティア」という言葉を用いていた。

また注目すべきなのは、そうした反対派の学生たちが今回のボランティアを労働として捉えているということだ。労働であるからにはその条件が適正なのか、そしてそこに十分な対価があるのかという基準で是非が判断される。そこには「ブラック・バイト」や「ブラック企業」といった、学生たちが現在経験しているか、あるいは今後経験するかもしれない搾取への不安がある。そしてその不安は、自分たちを巧みに搾取しようとする存在(東京都、政府、企業)への批判的態度を育んでいるようだ。

口をそろえて「一生に一度」

一方、ボランティアに肯定的な学生たちはどうであろうか。

アンケート調査ではボランティアに肯定的な学生は78名(32.5%)だった。またそのうち10名が留学生(全14人)だったことは、今回の組織委員会の発表内容(外国籍の応募者が44%)とも親和性がある。「東京2020大会のボランティアになって、中国語・英語・日本語を活用して、さまざまな国から来る外国人観光客を手伝うことが良い社会経験になると思います」(中国人留学生のコメント)というように、留学生や帰国生たちは自分の国際経験を生かせるチャンスとして、ボランティア参加に前向きな傾向が強く見られた。

肯定派の多くの学生が2020年大会を国際交流・異文化交流の機会として捉えていたが、さらに特徴的だったのは、ほぼ皆口をそろえて「一生に一度」というフレーズを用いていたことだ。

たとえ、やりがい搾取と言われているとしてもオリンピックが母国で開催されることは人生で一度しかないかもしれませんし、何らかの形で関わりたいと思っている人は少なくないと思います。待遇面がよくなかったとしても、人生経験としてやっていいと思います。

次、東京でオリンピックやるときは自分は死んでるかなって、一生に一度って考えたら、やらないで後悔するよりも、やって後悔したほうがいいかなと。