ITの力を使って無断キャンセルの抑止を

ただし、無断キャンセルの多くは「うっかり」や「認識不足」だ。だから、消費者に対して無断キャンセル問題への理解を深め、マナーの向上を呼びかけ意識を変えることには一定の効果は期待できる。

しかしそれだけでは根本的な解決にはならない。無断キャンセルの背景には、「お客が飲食店にキャンセルの連絡をしたのに電話が繋がらなかった」とか「予約日時の聞き間違い(言い間違い)があった」といった事情があるからだ。ITの力を活用すれば、解決できるケースも少なくない。

無断キャンセルがなくなれば消費者に利益が還元される

無断キャンセル対策推進協議会の会合の様子

無断キャンセルが減ると何か起こるのか。まず飲食店の損害が減るので、その分消費者に還元できる。無断キャンセルを恐れて「コースのみ」など予約に制限のある飲食店もある。そうした店でも、予約の自由度が上がるかもしれない。あるいは、従業員に還元できれば、モチベーションが上がり、よりよいおもてなしも実現する。飲食店の収益を守ることで、結果としてそのお店を利用する大多数の「善意のお客」も幸せにできるのだ。

無断キャンセルはお客の理解と飲食店の工夫があれば、限りなくゼロにしていくことができる。その一方で、通常のキャンセルはどうすればいいだろうか。体調が悪くなった、事故やトラブルで行けなくなるなどの突発的なトラブルは誰にでもありうることだ。

飲食店の多くは、そのようなお客に対してキャンセル料を徴収すべきだとは考えていない。無断キャンセルをゼロにできれば、それで十分という飲食店が多いのだ。

やむを得ない事情を抱えたお客がリスクを負うことなく、気軽に予約できる環境を守っていくためにも、飲食店を利用する際には、キャンセルがわかった時点でできるだけ早めの連絡をお願いしたい。われわれも、スムーズにキャンセル連絡ができる環境を整えることで、飲食店とお客の双方のお役に立っていきたいと考えている。

中村 仁(なかむら・ひとし)
トレタ代表取締役
2013年に株式会社トレタ設立。飲食店向けの予約/顧客台帳サービスを提供。パナソニック、外資系広告代理店を経て2000年に飲食店を開業。立ち飲みバー「西麻布 壌」、とんかつ「西麻布 豚組」、豚しゃぶ「豚組 しゃぶ庵」などの飲食店を経営。ツイッターを活用した集客で「外食アワード 2010」を受賞。2011年には食の写真投稿アプリ「ミイル」をリリース。「食の未来アカデミア」のラボ長を兼任。2018年11月より無断キャンセル対策推進協議会理事長。
(写真=iStock.com 画像・写真提供=トレタ)
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