※本稿は、豊島雅信『行列日本一 スタミナ苑の繁盛哲学』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
アルバイトには腹一杯メシを食わせる
営業が夜11時に終わったら、そこから後片付けが始まるんだ。客が食べた後のテーブルの食器をアルバイトが片付けて、その次に床掃除。それが終わったら、アルバイトの子たちが楽しみにしている賄いの時間だ。
うちの賄いは基本的に肉を出す。余った切れ端や、スープも出す。もちろんごはんはおかわり自由だ。
賄いの肉はお客さんに出す品物と味は変わらないよ。1日思い切り働いて、最後に腹一杯メシを食う。若い子が多いから、みんなうれしそうに食べてくれる。気持ちがいいよね。
アルバイトの食事が始まっても、僕と兄貴、そのほかの従業員は、まだまだ仕事があるから一緒には食べられない。僕たちの食事はさ、アルバイトが帰った後、肉やホルモンの仕込みが終わってからって決まってるんだ。時には朝方になることだってある。
アルバイトが食事している頃、僕はトイレ掃除を始める。ゴム手袋をハメて、ゴシゴシと手で洗ってるよ。たしか、店がだんだん忙しくなって来た時期に「トイレ掃除は僕が自分でやる」って決めたんだ。だからもう何十年もずっと続けている。
最初は従業員もアルバイトも、僕がトイレ掃除をしているから驚いていたけど、もう慣れっこだから、気にしてないんじゃないかな。アルバイトの子たちはわいわい楽しそうに食事をしているよ。
手取り足取り教えなくていい
トイレがきれいだと気持ちいいじゃない。気持ちよく用をたしてもらって、お酒を飲んで、またここでおしっこしてくれたらアルコールがどんどん売れるんだから(笑)。トイレがきれいだったらお客さんも気持ちがいいし、売り上げも上昇する。いいことだらけだよ。
換気扇だって毎日掃除しているね。うちの店の設備は古いかもしれないけど、どれも清潔だと思う。
アルバイトには、掃除の仕方を手取り足取り教えることはしない。でも、みんなあっという間に掃除を覚えて、隅々まできれいにしてくれる。
彼らにはこう言ってるんだ。
「掃除は自分の部屋を掃除するようにやるんだよ」って。
「手を抜いたら、明日、1組客が来ないよ」って言うこともある。もう一つ手を抜いたら、さらに1組来ない。明後日には2組来ない。そう考えたら拭きたくないところも拭かざるをえないでしょ。貧しい頃、僕は店が暇だった頃の怖さを知っているから、言葉には重みがあるんじゃないかな。
暇が一番おっかない。なぜって、従業員や店の見ないでいいところまで見えちゃうから。忙しいと、仕事だけに集中できるだろ。