前頭側頭型認知症で万引きや盗み食いなどの反社会的行動

「脱抑制」は認知症でも起こるケースがある

脳梗塞で脳の血管が詰まり、脳神経細胞が死ぬと、認知症になることもある。このタイプの認知症は血管性認知症と呼ばれる。血管性認知症は、脳梗塞だけでなく、脳の血管が破れる脳出血によっても引き起こされる。

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他のタイプの認知症でも、「脱抑制」は起こりうる。とくに「脱抑制」が多いのは、前頭側頭型認知症である。前頭側頭型認知症では、その名の通り、主に前頭葉と側頭葉が萎縮する。その点で、大脳全体が萎縮するアルツハイマー型認知症とは違うのだが、問題は前頭葉の機能が低下して、抑制がきかなくなる「脱抑制」が起こりやすいことだ。

そのため、前頭側頭型認知症になると「脱抑制」のせいで社会的ルールを守れず、万引きや盗み食いなどの反社会的行動がしばしば出現する。困ったことに、こうした行動を周囲から注意されたり、制止されたりすると、本人は興奮する。ときには攻撃的になることもある。自分が病気であるという自覚、つまり病識がなく、悪いことをしたとは全然思っていないからである。

認知症になると怒りっぽくなる

前頭側頭型認知症に限らず、認知症になると怒りっぽくなることが少なくない。これは、主に2つの理由によると考えられる。まず、記憶障害のせいで大切な物をなくしたり、道に迷ったりすることが増え、不安になる。そのうえ、病識がないので、そういう自分をなかなか受け入れられず、イライラして怒りっぽくなる。

さらに、妄想が出現すると、一層怒りっぽくなる。妄想で多いのは、お金や財布などを「盗まれた」と訴える物取られ妄想である。この物取られ妄想は、記憶力が低下して、お金や財布をどこに置いたか忘れてしまい、探し回っても見つからないので、「(お金や財布が)ない」→「誰かが盗った」と短絡的に考えることによる。

このように認知症になると、しばしばイライラして怒りっぽくなり、それが「脱抑制」に拍車をかける。その結果、暴言や暴力などの攻撃的な言動が増えることもある。したがって、高齢者がイライラして怒りっぽくなったら、早めに病院に連れて行って頭部MRI検査や心理検査を受けさせることをお勧めする。