工場は、僕の夢を一緒に叶えてくれる最大の協力者であり同志。「やってあげる」のではなく、「一緒に夢を追いかけてもらっている」。
ファクトリエの理念を押しつけるのではなく、相手の事情に寄り添いながら、自分から学べることはないかと、必死に食らいつこうと思うようになりました。
最高のパートナーと、最高のものづくりをする
熊本県人吉市のシャツ専門工場、HITOYOSHIと出合えたのは、僕のマインドチェンジが起きた直後の2012年5月のことでした。
世界の名だたるブランドの無理難題に応えて技術力を高めてきたHITOYOSHIの工場は、一流のものづくりの資料の宝庫でした。
服のデザインを考えるのはブランド側にいるデザイナーの仕事ですが、そのデザイナーが描き起こした仕様書通りにつくるのは、工場の役割です。つまりHITOYOSHIの工場には、ブランドが求めるデザインを形にするノウハウが大量に蓄積されているのです。
すべての光景を目に焼き付けるように、その1週間を過ごしました。オリジナルのシャツをつくるのだから、工場側も一切、妥協はしません。
僕も同じように、自分が本当に欲しいと思うシャツをつくろうと本気でぶつかりました。誰かの意見に左右されると、ありきたりのものになってしまう。僕は誰の意見も聞かず、ただひたすら自分が腕を通したいと思えるシャツを考え続けました。同時に、工場のクラフトマンシップを的確に伝えるには、どんなシャツがいいのかと頭をひねりました。
試作品をつくっては直し、というやり取りを10回ほど繰り返し、ついにシャツが完成しました。2012年5月に吉國社長と握手を交わしてから、4カ月半が過ぎていました。
「これまで私が企画・生産してきたシャツは1000万枚以上。その中でも、一番品質のいいシャツをつくることができたよ」
社長の言葉に、僕は涙が出そうになりました。
最高のパートナーと、最高のものづくりをすること。ファクトリエがHITOYOSHIのシャツを扱うことからスタートできたことは、大変な幸運でした。
ファクトリエ代表
1982年熊本生まれ。1917年創業の老舗洋品店の息子として、日本製の上質で豊かな色合いのメイド・イン・ジャパン製品に囲まれて育つ。大学在学中、フランスへ留学し、グッチ・パリ店に勤務。2012年1月、ライフスタイルアクセント株式会社を設立し、同年10月に「ファクトリエ」をスタートさせる。