一流FPが10冊すべてを読み、厳選した「3冊」

コメントするにあたり、筆者はランキング入りしたすべての本を読んだ。上位10冊は大きくわけて、「お金を通じて人生や価値観を考える」と「お金を貯める、増やす、節約するための指南書」という2つのタイプにわけられる。

1位の『改訂 金持ち父さん貧乏父さん』は前者のタイプで、お金とは何なのか、働くとはどういうことなのかを、著者が育てた2人のお父さんを通じて学ぶ、世界的ベストセラー本。初版から時間が経過しているが、内容は最新の経済状況などに適したものに改訂されている。

2位、3位は、後者のタイプ。『知らないと損する 池上彰のお金の学校』も『はじめての人のための3000円投資生活』も、これからお金の知識を学びたい、投資したくても何から始めたらいいかわからないという人にうってつけだ。

本誌では、ランキング上位の本を筆者の視点で4ページにわたって解説しているが、今回は、そこに盛り込めなかった「個人的ランキング ベスト3」を紹介したい。

【個人的ランキング1位】

「投資家が「お金」よりも大切にしていること」(藤野英人 星海社新書)

藤野英人『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)

本書は、単に投資を推奨する内容ではなく、「お金の本質とは何か」がメインテーマ。読み終えると、日々の生活の中でふと本の内容を反芻してしまう、後を引く1冊である。

著者は、ファンドマネージャーとして著名な藤野英人氏。2003年にレオス・キャピタルワークスを創業し、取締役・最高運用責任者(CIO)として「ひふみ投信」を運用している。

直販の「ひふみ投信」と銀行や証券等の外販の「ひふみプラス」は、格付投資情報センター(R&I)が選定する「R&I ファンド大賞 2018」を受賞するなど、投資家なら誰でも知っている(に違いない)日本を代表するアクティブファンドだ。

筆者もFPとして一般の方からお金の相談を受けているが、著者が語る「お金について考えることは、自らの『働き方』や『生き方』を真剣に考えることと同義である」という意見に同感する。

日本では、お金について話すことは何となく後ろめたく、お金にこだわる=「汚い」、「守銭奴」のようにマイナスイメージを持つ人も少なくない。その根底には、清く・貧しく・美しく生きる日本人の素晴らしさを表した「清貧の思想」がある。しかし、残念なことに、これが本来の思想とはかけ離れた解釈で日本人に根づいてしまった、と著者は言う。

《「理想に生きるために、あえて豊かな生活を拒否する」という思想が、「豊かになるためには、理想を捨てて汚れなければいけない」という考え方に変わってしまったのです》(同著より)

このように間違って解釈された「清貧の思想」ではなく、清らかで豊かになる「清豊(せいほう)の思想」を目指すべきではないか。著者の主張は目からウロコのユニークな発想だと思った。

そして、「清豊」でなければ成功できない、というのは、ファンドマネージャーとして23年間で5700人の社長を取材した著者の言葉として非常に説得力があった。

筆者の場合、投資信託はインデックスファンドを中心に運用しているが、本書が面白かったので、つい「ひふみ投信」を買ってしまいそうになる。とくに、就活を控えた大学生や社会人になりたての若い世代には、お勧めしたい1冊だ。