就職活動の常態化を防ぐには

「就活ルール廃止」によって最も懸念されているのが、「就職活動の常態化」です。一年中いつでも採用活動が行われるようになると、大学生はそれこそ学業どころではなくなります。早期化や長期化が本格化し、大学1~2年生から毎日のように就職活動をするということは、避けなければなりません。

また、「就職活動の常態化」は、企業側に「採用活動の常態化」をもたらします。採用担当者は今まで以上の労力を注がねばならず、企業側にとっても望ましい状態ではありません。

想定しうる極端なケースを紹介しましょう。例えば、大学1年次にある企業から内々定をもらった学生がいるとします。その学生は、就職するまで3年間、大学で学び続けることになります。すると企業側は、その学生が就職するまで3年間のフォローアップをしていかなければなりません。大学2年生であれば、2年間のフォローアップが必要です。

変化の激しい市場に対応する企業が、2年間、3年間と未来の労働力を事前に確保するのは、現実的ではありません。

これを踏まえると、「就活ルール廃止」後の新卒採用を、3年の夏から大学を卒業するまでの主に4つのターム(期間)に集中的に実施すれば、就活の長期化と早期化を回避することができることになります。講義が実施されない期間に実施すれば、採用活動が大学生の学業を脅かすこともなくなります。これに通年採用を組み合わせると、「ターム&プール採用」モデルになるのです。

「ターム&プール採用モデル」のイメージ(作成=田中研之輔)

「ターム&プール採用」のスケジュール

具体的な採用スケジュールを見ていきましょう。まず、大学3年生が夏季休暇を迎える8月と9月にかけて、ターム1の<キャリア新卒採用>を実施します。

ターム1:<キャリア新卒採用>

ターム1では、「実績」と「資格」による基準を設けて、その基準をこえる学生のみがエントリー可能とします。「実績」とは、大学在学時に、特定の技能や経験を通して、一定以上のアウトプットや評価を得たことです。基準としては、中長期及ぶインターンシップでのプロジェクト経験、プログラミングやデザインによるプロダクト開発経験、ビジネスコンテスト等での表彰経験などがあります。資格の事例としては、IT資格、簿記、TOEIC他英語検定、その他資格などです。

ターム2~4:<新卒採用前期・中期・後期>

ターム2~4は、現在行われている新卒採用プロセスを想定しています。ただし、二つ違いがあります。一つは、1タームごとに、エントリーから内定までのスケジュールを回すので、一人にかける採用期間を現行よりは短くできます。より的確に表現するのであれば、集中的に選考を行うということです。もう一つは、3タームあるため、就活生は準備ができたタイミングでエントリーできることです。学業に打ち込んでいたり、アルバイトやサークル活動、インターンに取り組んだりしている場合には、ターム3やターム4でエントリーしても内定がもらえる仕組みを用意しておきます。

プール採用:<新卒採用・第二新卒>

プール採用は、経済同友会が提唱した「新卒・既卒ワンプール/通年採用」を踏襲します。プール採用には、長期インターンや海外留学をしていた学生が、それぞれのタイミングでエントリーすることができます。もちろん、ターム採用で内定が取れなかった学生も、プール採用にエントリーすることができます。これまでの状況を鑑みるならば、プール採用を選択する学生は少数であることが推察されます。とはいえ、プール採用があることで、学生はより主体的にキャリア選択をすることが可能になるのです。