新卒採用は変化すべきときを迎えた

「ターム&プール採用」は、新卒一括採用とも通年採用とも違います。政府が定めたように現行就活ルールを維持する場合には、大学の講義やゼミに参加できない就活生が毎年大量に生み出されますが、「ターム&プール採用」では、そのような事態を避けることができます。

「ターム&プール採用」は、新卒一括採用で大学生の学業を脅かすことがなく、通年採用で人事担当者を今以上に疲弊させることもない、実現可能な形での「第三の新卒採用」です。また、通年ではなくタームを設定し、卒業後のプール採用も用意していく「ハイブリッド型の新卒採用」のモデルです。

「終身雇用」や「年功序列」といった日本的雇用システムは、社会変化に対応して変化してきました。新卒採用も、いま、変化すべき時期を迎えたのです。新卒一括採用は、雇用のミスマッチを大量に生み出しているという制度的なひずみから目をそらしてはいけません。

現状に合わせた新卒採用モデルを

経団連による「就活ルール廃止」の発表は、混乱を招きました。ただ、言えることは、大学から社会への新卒採用がなくなることはありえないということです。

そうであるならば、新卒採用はさまざまな形式を取り入れながら、現状に即したモデルを作り上げていかなければなりません。現行の新卒一括採用で抱える問題を一つ一つ、現実的に実施できる形で解決していくことが求められます。

就活を社会問題として捉えるならば、いま、求められているのは、「民間主導の就活」から「政府主導の就活」へという問題のすり替えではなく、解決策を探り、実際に試していくことなのです。新たな新卒採用モデルを創り上げていく上で、失敗を恐れてはいけません。

その一つの突破口となるのが、「ターム&プール採用」なのです。「ターム&プール採用」を取り入れ、学業をおろそかにせずに、雇用のミスマッチも減らすことのできた採用事例を一つでも増やしていけるように、大学と企業の接点をさらに増やしていければと考えています。

田中研之輔(たなか・けんのすけ)
法政大学 キャリアデザイン学部 教授
1976年生まれ。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめ、2008年に帰国。専攻は社会学、ライフキャリア論。著書に『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(ちくまプリマー新書)、『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(ちくまプリマー新書)、『ルポ 不法移民――アメリカ国境を越えた男たち』(岩波新書)など他十数冊。Original Point 株式会社 社外顧問。
(写真=時事通信フォト)
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