「入管政策の抜本的な転換であることは間違いない」

「今国会では日本社会のありようを変える可能性のある重要法案が審議される。外国人労働者の受け入れを拡大する入国管理法改正案だ」

冒頭部分からこう指摘するのは、10月25日付の毎日新聞の社説である。見出しは「臨時国会スタート 首相が議論の土台作りを」だ。

ちなみにこの25日付で新聞各紙はどこも、安倍首相の所信表明演説に対する社説を掲載している。

毎日社説は「深刻な人手不足への対策であり、移民の受け入れではないというのが政府の説明だが、入管政策の抜本的な転換であることは間違いない」と指摘する。

さらに毎日社説は論を展開する。

「事実上の移民政策につながるとの指摘がある一方で、家族の帯同を5年間認めないなどの制限に対しては人道上の問題も懸念される」
「首相は『世界から尊敬される日本、世界中から優秀な人材が集まる日本を創り上げていく』と強調した」
「そうであるならば、人手不足対策に矮小化するのでなく、移民の受け入れも含めた社会政策として真正面から論じるべきだ。与野党で徹底した議論をしてもらいたい」

「真正面」からの議論には大賛成だ。やはり時間をかけて議論する必要がある。

「自民党内を刺激したくない」という思惑がうかがえる

10月25日付の朝日新聞の社説もその中盤で出入国管理法改正案について触れ、次のように指摘する。

「首相は国内の深刻な人手不足を理由に、外国人材の必要性を強調した。だが、言及は総じてあっさりしており、この国のかたちや社会のありように関わる重大テーマだという認識はうかがえなかった。自民党内に根強い異論を刺激したくない――。そんな思惑から深入りを避けたのなら、本末転倒だろう」

どう見ても「国のかたちや社会のありように関わる重大テーマ」なのだ。朝日社説が指摘するように自民党内の反対論を気にするあまり、正面からの論議を避けているのだとしたら実に情けない話である。

さらに朝日社説は主張する。

「首相が演説の中で繰り返し使ったのが『国民の皆様と共に』という言葉だ。『国民』という以上、政権与党を支持しない人を含め、多種多様な人々に向き合う覚悟が必要である」

安倍首相は自民党総裁である前に日本という国の首相なのだ。自民党1党のことを慮って本筋から外れるような発言は許されない。