※本稿は、三條慶八『儲かる会社に変わっていく社長の全テクニック』(KADOKAWA)の第5章「『事業承継』『後継者育成』で会社の未来を創る」の一部を再編集したものです。
中小企業は社長を探すにも大変
「働き方改革」のもとに転職者が増加しているというニュースをよく見ます。業務自体でいえば、中小企業ではプロジェクトを数人、時には1人で進められることがあり、大きな裁量を与えられることが多いです。また、大企業に比べて上司も少ないので、何かの承認を得るにも柔軟で小回りがききます。
こう見てみると、自分で仕事の舵取りをしたい人にとっては、中小企業のほうがやりがいを感じやすいのではと思えます。
しかし、本当にそうでしょうか? 中小企業には中小企業の難しさがあり、そこをしっかりと理解しておかないと「仕事以前のこと」でつまづくことになります。
近年、中小企業の後継者不足が深刻となっており、中小企業庁の試算によると、高齢の経営者が経営する中小企業245万社中127万社、約半数が後継者未定だそうです。30年前は7割あった親族への承継が、最近は5割を切っています。
今後は、親族以外の内部昇格や外部からの招聘も増えていくでしょう。もはや同族への事業承継にこだわっていられる時代ではなくなっているのです。
このように中小企業では存続のために後継者(=社長)のリクルートに必死です。その現場を見てみましょう。
「銀行の担当者が会ってもくれない」
「私の知識や技術が少しでも役に立つなら、と軽い気持ちで引き継いだのですが、まったくの間違いでした」
どうみてもエリートサラリーマンにしかみえない中年の紳士が、私の事務所に相談にみえました。
この方は1年ほど前に外資系の投資顧問会社を辞めて北関東の実家に戻り、家業の工具製造会社を経営しています。まだ40代半ばですが、高齢のお父様が寝込んだために、ご両親のたっての望みで社長を引き継ぐことになりました。
同社は技術力に定評があり業績も安定しているために、引き継ぎ自体は順調に進んだのですが、社長就任後しばらくしてからある問題が浮上してきました。
それは、社長業を引き継いだ本人の気持ちの問題でした。それまでの仕事のやり方とのギャップが大きすぎて精神的に落ち込み、これからどうしていいかわからなくなった、というのです。