『めちゃイケ』では、レギュラーメンバーはいつまでも「青春」ぶっていて、挑戦者として困難に立ち向かうというスタンスを崩さない。宗教的な熱狂のなかで、感情を高ぶらせて、時には涙を流す。しかし、20年以上の歳月を経て、出る人も大人になってしまったいまでは、視聴者が『めちゃイケ』に特別な思い入れを持つことが難しくなっている。

レギュラーメンバーも、もはや一枚岩ではない。そのことを象徴する事件があった。2017年11月11日放送回で、岡村がメンバーに番組終了を告げて回るという企画が行われた。そこで、メンバーのひとりである鈴木紗理奈が普段『めちゃイケ』を見ていないことが判明したのだ。その場にいた片岡が鈴木を問い詰めると、彼女は慌てて弁明した。

「すいません、テレビを本当に見ないんです」

タレントとしての青春時代の終わり

「テレビがいちばん面白いゴールデンタイムと言われる時間は、私、いちばん忙しいんです。晩御飯、宿題しなさい、で、寝る、で、8時にベッド入れて、こうでああで、いちばん私が私じゃない時間なんです」

そう言い訳をする鈴木の下には、「『めちゃイケ』が終了する社会的背景。」というテロップが出ていた。『めちゃイケ』はいまや、視聴者だけではなく、当の出演者自身からも見限られていたというのだから、なんとも皮肉な話である。『めちゃイケ』は、岡村をはじめとする出演者にとって「青春」そのものだった。制作者や熱心な視聴者にとってもそれは同じだろう。

そんな『めちゃイケ』が終わったというのは、出演者のタレントとしての青春時代が終わったということを意味している。同時に、「王道バラエティ」の典型だった『めちゃイケ』の終わりは、テレビバラエティの青春時代が終わったことを象徴しているともいえるだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
ライター、お笑い評論家
1979年生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『逆襲する山里亮太 これからのお笑いをリードする7人の男たち』(双葉社)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論 』(イースト新書)など多数。
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