『めちゃイケ』の精神的支柱だった岡村が突然抜けてしまったダメージは深刻だった。このときには、岡村の穴を埋めるべく、大規模な新メンバーオーディションが行われた。「ピンチのときこそ、あえて一歩前に踏み出す」という『めちゃイケ』らしい決断だった。そこでオーディションを勝ち抜いたジャルジャル、たんぽぽらが新メンバーとして加わることになった。

ところが、岡村はわずか5カ月間の休養を経て、無事に帰ってきてしまった。これにより、岡村の穴を埋めるはずだった新レギュラーの役割が宙に浮いた状態になった。レギュラーの人数が増えすぎたため、それぞれにスポットを当てることができなくなり、見るほうもそこに思い入れを持つのが難しくなってしまった。

新規視聴者にはハードルが高くなった

また、番組が長く続いたことで、旧メンバーの芸能界におけるポジションにも大きな変化があった。加藤は『スッキリ!』で朝の顔となった。オアシズの大久保佳代子はアラフォー女性芸人の代表格として数々の番組に出演。鈴木紗理奈は女優として活動していて、2017年にはスペイン・マドリード国際映画祭で最優秀外国映画主演女優賞を受賞した。個々のメンバーがほかの番組や仕事でも自分の持ち味を出して活躍するようになってきた。その結果、彼らの実像と『めちゃイケ』で求められるキャラクターに微妙なズレが生じてきた。

テレビを見ている一般の視聴者にとっては、『めちゃイケ』もそれ以外の番組も同じだ。ほかの番組では楽しくはしゃいでいる大久保が、『めちゃイケ』では妙に型にはまっておとなしい、などということがあれば、不自然に見えてしまう。『めちゃイケ』における大久保のキャラクターをきちんと理解できるのは、長年番組を見ている人だけだ。『めちゃイケ』の視聴率が徐々に下がっていったのは、新しく見ようとする人が楽しむにはハードルが高い番組になってしまったからではないか。