共感できる価値観が一体感を生む

次にメンタル、つまり価値観というのは、どうして重要なのでしょうか。

価値観とは、わかりやすく言えば、自分が人生において何を重要視しているか、何を大切にしているかといったことです。それは人によって、家族かもしれないし、夢や目標かもしれないし、健康が大事かもしれません。

カリスマに求められるのは、共感できる価値観です。自分にとっていちばん大切なものが、お客様にとってはそれほど重要ではない、もしくはあまり共感を得られない価値観であったとしたら、お客様との一体感は生まれません。

家族、健康、友人、祖国といった価値観には、まんべんなくほぼ全員が納得するような、誰もが大切にするものという側面があります。それらの誰もが納得できる価値観をあえて打ち出すのです。

価値観の打ち出し方は宗教団体の手法に近い

価値観を打ち出すときのやり方というのは、実はある意味、宗教団体が使っている手法によく似ています。

宗教団体が信者を集められる理由は、そのプロセスにあります。教祖がいて、教団になっていく過程で、そこには「教義」というものが必ず存在するようになります。教義とは、教団内で重要な価値観のようなものです。

教義を信じ、忠実に守ると信者になります。この信者を作るプロセスとして、ごく当たり前のことを「大義名分」をつけてやらせる、という方法が使われます。

たとえば、電車のなかで座っているときに、目の前に、腰の曲がったお年寄りの方がいるとします。そこですぐに席を譲る人もいれば、何らかの理由でためらい、席を立たない人もいるでしょう。

しかし、仮に、ある宗教では「年配の人は必ず、何があっても大切にしなければならない」という教えがあったとします。あなたがその宗教の信者であれば、迷うことなくすぐ席を譲る行動に出るはずです。たとえそのお年寄りが席に座ることを断っても、実は自分も具合が悪くて座っていたくても、あなたにとっては、教えを守ることが自分のなかの絶対的な正義であり、席を譲ることには立派な大義名分があるのです。