相手を動かす3つの条件「EMS」

ボディランゲージ、声の使い方、言葉といった要素は、目に見える、もしくは五感で感じ取ることのできるテクニックとして、聴衆と良いコミュニケーションを取るために必要です。しかし、スピーキングの場では、こういった目に見える要素以前に、それらを支える部分がどうであるかが、最後には全体を決めてしまうのです。

小山竜央『パブリック・スピーキング 最強の教科書』(KADOKAWA)

それは「E(エモーション/感情)」「M(メンタル/価値観)」「S(スピリチュアル/信条)」の3つです。この3つが、表に現れているボディランゲージや声、言葉といったものすべてを支えている、内面的な要素です。

たとえ、ここまで紹介したテクニックのすべてを知らない、もしくはそれらがうまくできなかったとしても、内面的な3つの要素が素晴らしければ、あなたはカリスマ・スピーカーと呼ばれるかもしれません。逆に言えば、表面的な要素をすべて完璧にマスターして実践できたとしても、内面が崩れてしまえば、そのセミナーは失敗に終わる可能性が高いでしょう。

見えない部分である感情がどれほど重要か、例を挙げましょう。

あるラーメン屋さんの店長は、パブリック・スピーキングの技術など1つも知らないのに、ステージに登場した途端、聴衆を魅了しました。それは、彼の感情がいつもハッピーで、メンタル、すなわち価値観の部分がお客様と一緒で、信じているものがはっきりしていたからです。それらが十分備わっているだけで、高度なテクニックを持っていて、鉄板の話ができるプロのスピーカーよりも、ずっと大勢の人を巻き込むことができたのです。

いらだちを見せる人の話は聞かれない

我々がいるセミナーの世界は、結局のところ、あなたが考えていることが何らかの形ですべて表に現れている、と思ったほうがいいのです。特にスピーカーという存在は、それがかなり表面に出やすいものです。

実際に多いのは、機材トラブルであったり、セミナーの進行がグダグダだったりするような場合に、怒りの感情を抑えきれないまま壇上に立ち、話し始めるような人です。これではお客様とのコミュニケーションは取れず、実際にコンテンツも売れないという状態になります。

このような目に見えない感情をコントロールすることは、非常に重要になってきます。