国との対立をあおるだけでは行き詰まる

次に読売新聞の社説を見てみよう。

「国との対立をあおるだけでは、県政を率いる重要な役割を果たせまい。新知事は、基地負担の軽減や県民生活の向上に地道に取り組むべきだ」

これが安倍政権の辺野古移設を支持する読売社説の書き出しだが、朝日社説と違って冒頭部分では辺野古移設をストレートには主張しない。知事選で安倍政権が敗れたから、主張したくてもできないのだろう。

ただしそこは熟練の論説委員がそろう読売新聞である。巧みに論を辺野古移設に持っていく。

「玉城氏が反対の立場を貫けば、移設工事の停滞は避けられない。日米両国は、早ければ2022年度の普天間返還を目指しているが、工事は大幅に遅れている」
「政府は、計画の前進に向けて、県と真摯な姿勢で協議するとともに、着実に基地の再編や縮小を進めなければならない」

安倍政権に対し、真摯な協議を求めるところなどは肯けるし、米軍基地の縮小も賛同できる。

辺野古への移設は、本当に「唯一の現実的な選択肢」なのか

問題は次である。

「翁長県政は、辺野古の埋め立て承認の取り消しや、工事差し止め訴訟などで計画を阻止しようとした。司法の場で翁長氏の主張は認められていない」
「県は8月、埋め立て承認を撤回した。政府は近く、裁判所に撤回の執行停止を申し立てる方針である。基地問題を巡って国と争いを続けることに、県民の間にも一定の批判があることを玉城氏は自覚しなければならない」

安倍政権の執行停止の申し立てについて朝日社説が「そんなことをすれば、県民との間にある溝はさらに深くなるばかりだ」と指摘するのとは反対の主張である。

社説の読み比べで大切なことは、この違いに気付くことだ。

朝日の主張と読売の主張、どちらが正しいのだろうか。読売社説は「選挙戦で玉城氏は、普天間の危険性除去の必要性も訴えていた。辺野古への移設は、普天間の返還を実現する上で、唯一の現実的な選択肢である」と駄目押しする。

しかし、辺野古への移設が本当に普天間の危険性の除去に繋がるのだろうか。当初からそこの議論が不十分であるところに、ボタンのかけ違いが生まれた気がしてならない。

(写真=時事通信フォト)
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