「高層階ほど優越感」タワマン族の落とし穴
マンション価格はエリア別に下落スピードが異なる。その事実について、拙著『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)では、「専有面積70平方メートルのマンション価格の下がり方はどこでも毎年100万円程度である」と書いた。首都圏の取引データを分析すると、築後10年で、3000万円の物件は2000万円、5000万円の物件は4000万円、1億円の物件は9000万円に下落していたのだ。
価格差の理由は、(1)所在地、(2)駅からの所要時間、(3)総戸数、(4)建物の階数、(5)面積帯という5つの物件情報で決定される。つまり資産価値が高くなる物件の条件とは、(1)都心寄り、(2)駅近、(3)大規模、(4)タワー、(5)ファミリータイプとなる。この逆で資産価値が低くなるのは、(1)郊外、(2)駅遠、(3)小規模、(4)低層、(5)ワンルームである。
この前提から考えると、千葉・埼玉での3000万円程度の新築物件は、将来的に資産価値が下落するリスクが大きい。その場合、住宅を売却しても、ローンが残ることになる。資産形成のために住宅購入を決めたのに、最長35年、負債を背負うことになるわけだ。
住宅購入で資産形成を図ろうとするのなら、5つの条件を踏まえたうえで、より高額な物件を選んだほうがいい。では、どうすればいいのか。「年収10倍の住宅ローン」はNGだが、「年収10倍の新築マンション」は問題ない。そのためには両親や祖父母から購入資金を贈与してもらうという手がある。現在、住宅取得では最大1200万円まで贈与税がかからない特例がある。金利面では絶好の環境にあるため、25%の返済比率ぎりぎりまでローンを組み、親族からの贈与で頭金をまかなうことで、資産価値の高い物件を購入したい。
そうした条件を踏まえると、タワーマンションが候補になるだろう。タワーはこれまでの常識を覆している。たとえば北向きは値上がりする。特に東京では港区・中央区・江東区の物件で顕著だ。これは北向きにオフィス街があり、夜景がきれいに見えるからだ。また南向きだと日射しが暑いという事情もある。
先日、講演で、「タワーマンションではエレベーターに乗ったときに、高層階の人が優越感に浸る」と話したところ、思いのほか笑いが取れた。タワーマンションは高層階ほど面積を広くし、価格帯を上げることで、購入者の虚栄心を満たしている。だが階層別に騰落率を調べると、低層階のほうが値下がりしづらい。虚栄心は満たせないかもしれないが、資産価値を考えると、低層階のファミリー向け住戸を選ぶほうが賢明だ。