投資案件にはあらゆる種類のデータ分析や詳細な定量的予測がついてきますし、人に関する決定はそれよりはるかに定性的に見えますが、投資帳簿の数字は実は予想値にすぎません。それらの予想値は妥当なこともある一方、希望的観測と大差ないこともあるのです。

20%に満たない予想収益の現在価値割引率(予想収益率)の投資案件を勧められたことがありますか。ないでしょう。その案件が本当に儲かるものである場合もありますが、提案者が、自分たちの希望や祈りが反映されたリターンになるよう、その投資の残存価値を調整している場合もあります。投資案件を検討する際には、数字を見るのはもちろんですが、最終判断を下すときには必ず直感を働かせてください。

たとえば、新しいオフィス・ビルへの投資を勧められたとしましょう。あなたがその都市に行ってみると至るところにクレーンがありました。その案件では損をするはずがないと言われています。しかし、あなたはどうも「腑に落ちない」と感じている。1年もすれば過剰供給になって、その「非の打ちどころのない」投資は1ドルにつき60セントの価値しかなくなるだろうと直感が告げているのです。

そんな投資はやめるべきです。いわゆる合理的思考の持ち主を激怒させることになっても。

一方で、人を採用する際に直感に頼るのは必ずしもいい考えではありません。直感に頼ると、早すぎる段階で候補者にほれ込んでしまうことがあるからです。私たちは、立派な学歴とすばらしい経歴が記された非の打ちどころのない履歴書に目を奪われます。面接ですばらしいことを言う好ましい候補者に目を奪われます。

そして、重要な空席をすぐに埋められる人にも、気付かないうちに往々目を奪われることがしばしばある。そのため、直感にせきたてられるまま急いで契約書にサインしてしまうのです。

ですから、採用については、あなたは部下に自分の直感を疑ってダブルチェックするという原則を守らせるべきでしょうし、あなた自身もそうすべきです。どの候補者についてもさらなるデータを掘り起こす、ということです。履歴書の行間を読んでください。電話で照会してください。そしてしっかり耳を傾けてください。賞賛と批判が相半ばするようなメッセージや不愉快な意見はとくにしっかり聞きましょう。

しかし、総じて言うと、直感はビジネスで大きな役割を果たします。しかも、よい役割です。それを上司や株主にどのように説明するかは、あまり悩む必要のないことです。彼らは彼らで直感を働かせているのですから。

(回答者ジャック&スージー・ウェルチ 翻訳=ディプロマット (c)2006. Jack and Suzy Welch. Distributed by New York Times Syndicate.)