1100万円の住宅ローンは一括返済? 月々返済?

夫婦のこづかいについても、現役バリバリで働いているならともかく、現状の月2万円ずつは「収入の割にふたりとももらいすぎだよね」という判断になりました。

結果、削減できたのは食費と外食費で3万3000円、通信費と保険料は各8000円、こづかい計2万円など、合計で約10万円。

残りの10万円の赤字は、夫の仕事でカバーすることにしました。幸い、専門の技術を生かした仕事が前の会社の紹介で見つかり、毎月約16万円の収入が得られるメドが立ちました。

最後に残った課題は、「住宅ローンをどうするか」ということでした。

「一括返済」と「月々返済」。それぞれのメリット、デメリットをお話しし、おふたりに決断を委ねました。

▼一括返済のメリット・デメリットは

完済までの利息分を払わなくて済むので、返済総額は少なくなるが、その分貯金が減るので、もしものときの備えが心配になる。

▼月々返済のメリット・デメリットは

収入を増やし、支出を減らせば、月々ローンを返済しながらも、今の貯金を取り崩すことはないが、今後、病気などで働けなくなったときに、返済が重い負担になる。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/K2_keyleter)

おふたりの結論は、「住宅ローンは残債1100万円の一括返済」でした。大変大きな出費ですが、月々10.6万円の出費は0円になります。

なぜ一括返済にしたのでしょうか。

徹さんに理由を聞くと、「再び仕事を始め、自分の技術を生かせる幸せをかみしめています。少なくなった貯金を、もう一度自分が働くことで増やしていくと思うと、がぜんやる気になるんです」とのこと。

夫は仕事を再開、65歳の年金支給まで760万円貯まる

一括返済で月々の返済がなくなることで、当初の収入の柱にしていた徹さんの個人年金と真理子さんの料理教室収入の合計額と、支出額がトントンの状態になりました。これに当初は想定していなかった夫の再就職による月収16万円がまるまる貯金に回せることで、65歳までの4年間で約760万円も貯まることがわかりました。

65歳からは公的年金が支給されるので、その分を貯めたり、65歳以降も仕事を続けたりすれば、老後資金をさらに増やすこともできます。家計の見直しと仕事の継続で老後資金のメドが立ち、おふたりの不安はきれいになくなっているように見えました。

「定年後の生活設計は難しい」とよく言われます。

収入は減るが支出が減らず、貯金や退職金に手をつけてしまう……。老後の生活のための貯金や退職金なので、家計の赤字補填を取り崩すのは、目的に合った使い方ともいえます。しかし、年金の満額支給が始まる65歳までは、できるだけ貯金や退職金には手をつけず、「安心を先に送る」ことが大事だと私は考えています。

そのための一番のポイントは、やはり家計の見直しです。定年後の見直しは手遅れになることもあります。私の考えるタイムリミットは55歳まで。それまでには、「これからの自分たちに必要でない出費」を見直してみてください。