「進次郎氏対策」としか考えられない農政の話題
石破氏も負けていない。
「日本は最も農業、林業、水産業に向いた国。土、光、水、温度。すべてに恵まれている」と切り出し、農業の持っている潜在能力をもっと引き出すべきだと力説した。
農政改革は安倍政権の柱の1つではある。いまでは軍事オタクとして知られる石破氏は、もともと農政族議員として知られていた。ともに農政については一家言あるのだが、それにしても20分の演説の中で、じっくりと語るのは意外な印象を与えた。
その理由は、「進次郎氏対策」としか考えられない。進次郎氏は安倍政権の下で党の農林部会長を務めた。その際、農協改革など大胆な農業政策を進めたことは記憶に新しい。今は部会長を退任して党筆頭副幹事長になっているが、引き続き農協によって農薬の販売価格に差がある問題などについて熱心に取り組んでいる。
安倍、石破両氏の演説は、進次郎氏の関心分野について自分も本気で取り組む姿勢を見せて、支持を得ようという深謀遠慮だといえる。
石破氏は進次郎氏の国会改革案を「丸のみ」した
ほかにもある。石破氏は記者会見で、安倍政権もとで浮上した森友・加計問題についての質問に答える形で、国会改革に触れ「スキャンダルの追及で予算や法案の審議が十分できなければ国民の負託に応えたことにならない。そのようなものは別の委員会でやる」と語った。
国会改革は、農政とともに小泉氏が取り組んでいるテーマ。小泉氏は自身が中核となる中堅・若手議員で国会改革案をつくっているが、案の柱はスキャンダルや不祥事が起きた時に集中的に調べる特別調査会を国会につくること。石破氏の発言は、その案を「丸のみ」した形だ。
このようにみると「小泉進次郎」の名は一度も出ていないものの安倍、石破の両氏が37歳の若手議員を強く意識して演説と会見に臨んだことがよく分かる。2人は100万人を超える党員、そして全国民に語りかけているような形を取りながら、実はたった1人の政治家をにらんで争っていたともいえる。言い換えれば国民不在の論争ということか。