※本稿は、「プレジデント」(2018年1月15日号)の掲載記事を再編集したものです。
マネー情報に詳しい人ほど貧乏になる
マネーリテラシーが高いと自負する亀井さん夫妻は、さまざまなマネー情報にアンテナを張り、家計管理と資産運用に余念がない。
住宅購入に際しては、年金生活に入る前にローンを払い終えようと、頭金の準備ができないまま全額を金融機関からの融資でまかない、頭金0円でフルローンを組んだ。住宅ローン控除による税の還付も狙っている。保険も掛け捨てはもったいないと、夫婦とも貯蓄性のある医療保険と、ほかに個人年金、外貨建ての終身保険にも入っている。一見すると賢い資産運用に思えるが、「将来」を見据えすぎて、実は「いま」の家計は保険やローンの支払いに追われてがんじがらめ。貯金をする余裕もないほどだが、赤字が出ているわけでもないからと、夫婦はなんの問題も感じていない。
亀井家の場合
●家族構成:夫 33歳 営業、妻 33歳 事務 契約社員 ●年収(額面):夫 460万円(うちボーナス 夫 69万円)、妻 300万円 ●貯蓄額:220万円
マネーリテラシーが高いと自負する夫婦。将来は夫婦で起業しようとセミナーに行ったり書籍を買って読んだり自己投資する。だが専門家から見ると、保険はメリットの少ない商品を選ぶ、住宅ローンは頭金なしのフルローンを組むなど、脇が甘い。
大きな固定費から見てみよう。まずは住宅だ。「マネーリテラシーが高いという割に、フルローンはいただけない」と経済評論家で個人投資家の加谷氏は疑問を呈する。「返済期間が長いほど、利払いの絶対額が増える。ローンはできるだけ短いほうがいいというのが一般常識。繰り上げ返済が可能ならぜひそうすべきです」。
保険についてはどうだろう。亀井さん夫妻と面識のある家計再生コンサルタントの横山氏は、「実はかなり評判の悪い保険に入っている。いまは外貨建てが人気だと勧められるままに即決してしまったらしい。保障内容もよく理解しておらず、マネーリテラシーが高いと思っている割には脇が甘い」と残念がる。自分の知識が正しいかどうか、専門家のアドバイスに耳を傾ける必要もあるだろう。
一方、投資コンサルタントの午堂氏は「貯蓄性の保険を選んでいること自体には賛成」と擁護するが、「ただし月4万円は掛けすぎ」と指摘。「保険は年間8万円以上の払い込みで最大4万円の所得控除、2万8000円の住民税所得控除を受けられる。月々8000円弱ぐらいの貯蓄性の高い保険に入っていれば、保険料を払っているうちは所得税と住民税が節税になり、満期になれば100%以上で戻ってきます」。