夏時間のフラグを立てた場合、電波時計は機種によって3種類の時刻を示す可能性がある。サマータイム未対応の時計はフラグを無視して日本標準時を示し、かつて議論されていた「1時間前倒し」を想定した機種は海外のサマータイム導入国のように1時間先の時刻を示す。つまり正確な時刻を示すことができるのは、「2時間前倒し」のサマータイム導入が決まったあとに設計された最新機種だけだ。

一方、送出する標準電波そのものを2時間前倒しとした場合、全ての電波時計が2時間前倒しの時刻を表示できる。ところが電波時計は標準電波の時刻を「日本標準時」だと判断するので、世界の国と地域の現時刻を表示する「世界時計」の機能を使った場合には、各国の時刻を2時間進めて表示してしまう。

サマータイムに起因する問題は、機器がサマータイムに対応しているかどうかだけでなく、機器ごとに異なるサマータイムの解釈や内部的な扱いでも生じるのである。スマートウォッチを除くと、時計の多くはファームウェアの更新に対応していないため、買い換える必要が生じると考えられる。

実はもう時計やパソコンに組み込まれている夏時間対応

さらに厄介なのはテレビやデジカメ、コンピュータでの対応だ。昔のコンピュータは単純に現地時間で動いていた。だが21世紀に入ってからは、パソコンなどの民生機器も含めてタイムゾーンやサマータイムに正しく対応できるよう、内部的には世界標準時で動くようになっている。

世界標準時を正しく現地時間に読み替えるために、コンピュータの多くは各国の時間と世界標準時との関係を記述した「tz database」と呼ぶデータベースを内蔵している。新たに日本でサマータイムを実施する場合には、このデータベースを更新した上で、タイムゾーンを扱う全ての機器のOSを更新する必要がある。

しかしながら医療機器や工場の生産ラインなど継続稼働が重要な領域では、安定運用を優先してOSの更新を忌避したり、メーカーが勝手な更新を禁止したりしているケースも少なくない。これらが独立して動作している場合は運用で対応できるが、ネットワークで他の機器と通信している場合は対応に苦慮することになるだろう。