地元紙に対して「佐喜真氏」とは答えにくい

不幸なことに沖縄では、辺野古の新基地受け入れをめぐり世論が分断されている。厳密に言えば「受け入れ賛成か反対か」と聞けばほとんどが「反対」だが、受け入れることで沖縄振興策が期待できることや自民党などとのしがらみを考慮して、受け入れることを容認するのもやむを得ないという考えの人も相当数いる。ここでは「消極的受け入れ派」と呼びたい。

このような複雑な状況で世論調査を行うとどうなるか。「反対」の人は、声を大にして玉城氏支持と語る。一方、「消極的受け入れ派」の人は、佐喜真氏に投票しようと思ってもなかなか口外しにくい。結局、佐喜真氏支持者も「玉城氏」と答えてしまうことが少なからずあるのだ。

県内では琉球新報と沖縄タイムスという地元紙2紙が覇権を争っている。沖縄2紙は、どちらも辺野古移設に反対の社論を持ち、翁長県政に好意的な報道をしてきている。このことは県民もよく分かっているので「琉球新報です」「沖縄タイムスです」と電話がかかってきて質問されると、やはり「佐喜真氏」とは答えにくいのだ。

沖縄の選挙では事前の調査は役に立たない

同様の歪みは沖縄以外の地域でもみられる。各マスコミは毎月のように世論調査を行って安倍内閣支持率を発表しているが、総じて言えば安倍政権に近い論調のメディアは内閣支持率が高めに出て、批判的メディアは低く出る。

この歪みは、メディアの論調に同調するような回答をする人がいたり、もしくは自分の意見に反する論調のメディアから電話がかかってきても調査に応じなかったりすることが大きな要因と言われる。沖縄の場合は、その歪みが一層顕著なのだ。

実際、これまで沖縄で行われた選挙でも、事前の調査とはかけ離れた結果が出たことがある。同じく辺野古移設が大争点となってことし2月の名護市長選挙。事前の調査では当時現職で受け入れ反対の稲嶺進氏が圧倒的にリードしていたが、ふたを開ければ自民、公明、維新が推した渡具知武豊氏が、かなりの差をつけて勝った。この時、「沖縄の選挙では事前の調査は役に立たない」ことが立証された。

この経緯はことし2月に報じた「なぜマスコミの情勢調査は大ハズレするか 名護市長選にみる報道不信の構図」を参照いただきたい。

だから、自民党側に敗北感はないし、玉城氏を推す立憲民主党などの「オール沖縄」勢力内にも楽観論はでない。