「二軸で歩く」を意識すると健康になる

【かじやま】歩くことは重要、けれど必要以上のエネルギーを消費する大股の「エクササイズウォーク」は高齢者には適していないということでしょうか。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Yue_)

【木寺】そうですね。歩くことの本来の目的は移動ですから、なるべく身体に負担のかからない歩き方をするべきです。高齢者には、その体力に合った歩き方があるはずで、それを実践することが健康寿命を延ばすことにつながる。僕が研究しているのも、身体に余計な負担をかけない合理的な身体の動かし方と、そのトレーニング方法です。

実は、動作改善を教えている理由のひとつに、父親がパーキンソン病を患って、歩けなくなったということがあるんです。歩けないまま死んでいった父親を見ていて、「歩けるか、歩けないかは、人生において大きな分かれ目。杖をついてでもいいから、ひとりで歩けるということが重要だ」と痛感した。その想いが根底にありますね。

【かじやま】わたしも交通事故のあと、2週間以上、完全に寝たきりになったのでよくわかります。歩けなくなる、自分の意思で移動できなくなるということが、こんなにもつらいものかと……。目の前で世界が閉じてしまったように感じて、人生に絶望しました。

【木寺】ご自身で「歩けないつらさ」を体験されたのですね……。

【かじやま】だから必死でリハビリしたんですよ。つらい経験をしたからこそ、筋力を維持する方法を学んで、少しでも長く自分の足で歩けるようにしなければと思ったし、そういう知識を多くの人に知ってほしいと。健康寿命を延ばす合理的な身体の動かし方とはどういうものか、ぜひ教えてください。

【木寺】「二軸動作」という考え方があります。歩行でいえば「二軸で歩く」ということ。これを説明する前に、まず中心軸のことからお話ししましょう。

女性らしい「ローリングが大きい歩き方」は腰痛を招く

【木寺】中心軸とは身体の真ん中をとおる仮想の軸、つまり、2本の脚で立つときの重心の位置に当たります。中心軸は静止するためのもの。中心軸を意識することは大事ですが、この感覚を強く持ちすぎると、動くことをじゃましてしまうのです。

そこで着想したのが「二軸」の感覚です。左の肩甲骨と左の股関節、右の肩甲骨と右の股関節を結ぶ2本の軸を意識すれば、いろいろな動作が合理的にできると考えたのです。

なぜ合理的かというと、左右の足の間隔(歩隔)をあけて二軸で歩くと、中心軸の感覚を持って歩くときよりも、骨盤の水平回転(ローリング)が小さくなって身体への負担が減るからです。

【かじやま】骨盤の無駄な動きが減ることが効率的に歩くことにつながるということですか。

【木寺】そうです。くわしく説明しましょう。わたしたちが歩くときは、無意識のうちに一直線上を歩いています。左右の股関節は離れているにもかかわらず、踏み出した左右の足はほぼ一直線上に着地する。中心軸の感覚を持っているために、こういう歩き方になるのです。

実際に歩いてみるとよくわかりますが、右脚を振り出すときは、右の腰が前方に動く。上から見ると、骨盤が反時計回りに回転する。これがローリングです。そのままでは身体が左を向いてしまうので、バランスをとるために左手が前に出る。ツルツルの氷の上で動くことをイメージすると、もっとわかりやすい。片方の足を出すと、腰がくるっと回っちゃうでしょう。だから、回転しないように反対側の手が出るのです。

このとき、上半身は右に、腰は左に回ろうとして体幹がねじれてしまう。大股の「ウォーキング」だと、脚を大きく出せば出すほど強くねじらなければいけないので、身体に無理がかかるわけです。ハイヒールを履いたり、内股で歩いたりする場合は、ローリングがさらに大きくなります。

【かじやま】ハイヒールや内股歩きでローリングが大きくなるとすれば、男性より女性のほうが足腰に負担がかかりやすいのですか。

【木寺】そういう傾向はあるでしょう。ローリングが大きいと女性らしい歩き方になるのですが、無理が重なるため、中高年になったときに腰痛などが出やすい。できるだけ「二軸で歩くこと」を意識するといいと思います。