自民党は今月行われる党総裁選に向けて公平・公正な報道を求める要望書を報道各社に配った。要望という形での報道威圧は、安倍政権の「お家芸」のようなものでもあるが、今までとはレベルが違う。報道各社からは怒りと戸惑いが漏れてくる。この要望文書、どこが今までと違い、問題なのか――。
掲載面積も「平等・公平」に扱うことを求める
問題の文書は8月28日付。自民党総裁選管理委員会の野田毅委員長名で新聞、通信社あてに配布された。
内容は、報道機関に公平・公正な報道を求めた上で
1.新聞各社の取材等は、規制いたしません。
2.インタビュー、取材記事、写真の掲載等にあたっては、内容、掲載面積などについて、必ず各候補者を平等・公平に扱って下さるようにお願いいたします。
3.候補者によりインタビュー等の掲載日が異なる場合は、掲載ごとに総裁選挙の候補者の氏名を記したうえ掲載し、この場合も上記2の原則を守っていただきますよう、お願いいたします。
2.インタビュー、取材記事、写真の掲載等にあたっては、内容、掲載面積などについて、必ず各候補者を平等・公平に扱って下さるようにお願いいたします。
3.候補者によりインタビュー等の掲載日が異なる場合は、掲載ごとに総裁選挙の候補者の氏名を記したうえ掲載し、この場合も上記2の原則を守っていただきますよう、お願いいたします。
という内容だ。今回の総裁選は8月末の段階で安倍晋三首相と石破茂元党幹事長の一騎打ちとなる構図は固まったので「2人を公平に報道してください」という意味になる。
衆院選前の「2014年文書」よりはるかに悪質
2012年に安倍氏が首相の座に返り咲いた後、安倍官邸や自民党は、メディアへの干渉を繰り返してきた。政権に近い読売新聞、産経新聞の単独インタビューは積極的に応じ、批判的な朝日新聞、毎日新聞などは冷遇する「マスコミの分断」は、その入り口だ。
世論の根強い反対の中で成立させた特定秘密保護法、改正組織犯罪処罰法(いわゆる「共謀罪」法)も、批判的なメディアを萎縮させる狙いがあったという指摘も受けている。
直接的にメディアへ介入したとして問題になったのは、2014年11月。衆院選を前にしてNHKと在京民放テレビ局に対して自民党が選挙報道の公正中立を求める要望書を提出した。この結果、テレビの選挙報道は、政党や候補者の主張を垂れ流す「無難」なものになり、激しく安倍氏を批判する街頭インタビューのようなものは目に見えて減った。
今回、総裁選を前に自民党が出した文書は、この「2014年文書」を想起させる。ただし、今回の文書のほうがはるかに悪質だ。