前立腺がん、甲状腺がん

前立腺がんは致死的という言葉からはほど遠く、進行が遅い「おとなしいがん」の代表です。放置という言葉が悪ければ「経過観察」で十分です。

血液検査(PSA検査)で値が高いと「生検(組織検査)」を勧められると思いますが、受ける必要は全くありません。無意味どころか、ひどい目にあいます。

前立腺生検は下半身に麻酔をかけ、肛門―直腸経由で細い針を10~14カ所刺して組織をとる検査ですが、前立腺は血管が豊富な臓器なので、小さな傷からでも大量に出血するリスクがあります。

いったん出血するとぎゅっと押さえて止血するわけにもいかず、緊急に内視鏡を入れクリップする羽目になります。細菌感染から敗血症性ショックでの死亡例も報告されています。

何事も合理的な米国ではPSA検査すら不利益が上回るとして、関連学会が検査の推奨を取り消しています。そうなると、PSA検査自体を受けない選択もありでしょう。

甲状腺がんも多くは良性です。悪性だったとしても進行が遅い「おとなしいがん」で、余命にはほとんど影響しません。ほかの病気の診療のついでに偶然見つかる例が多いので慌てますが、前立腺がんと同様に経過観察で十分です。甲状腺がんで亡くなる前に、他の要因で死亡する可能性のほうがよほど高いのですから。

実際、老衰で亡くなった方の剖検例を見ると、甲状腺がんや前立腺がんが3~4割という高頻度で見つかります。ちなみに未破裂の脳動脈瘤もけっこうな頻度で出てきます。無駄な検査や手術を受けないほうが、支障なく天寿を全うできる傍証ではないでしょうか。

高血圧、糖尿病、脂質異常症

前述のとおり私は04年に心臓にステントを入れましたが、それをきっかけに降圧剤を飲み始めました。また、07年に糖尿病を指摘され、以来、血糖を下げる薬を飲んでいます。

高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病は「病気」ではなく、老化現象といったほうが的確です。したがって治りません。40~50代の若いうちは薬を飲むより生活習慣の改善が優先です。

ただ、生理現象だとはいえ糖尿病を放置すると、神経障害や失明、腎症を起こし、心筋梗塞や脳卒中の危険性も高くなります。そこで血糖値を下げる薬を飲むのですが、注意が必要なのは薬が効きすぎての「低血糖」です。

つい数年前まで血糖値は厳格に下げるほどいい、とされていました。しかし、低血糖による意識障害や不整脈が突然死を誘発することが明らかになり、今は基準値を緩める傾向にあります。

私は自分でも4度、低血糖を経験しました。4度目は血糖値が正常値下限の半分以下に落ち込み、かなり危うい状態でした。それ以降は、低血糖リスクが高い「SU(スルホニルウレア)剤」の服用をやめています。