メディアを巻き込んだ論争は今後激化する
読売、産経は、もともと論調は保守的で、特に安倍政権に近い新聞として知られている。安倍氏に対しては好意的な記事を書き、野党には厳しい論調の記事が多い。総裁選という「自民党内」の闘いになれば、矛先は野党から、安倍氏のライバルである石破氏に向けられることになる。
例えば8月22日の朝刊。朝日と読売は総裁選期間中に2人の討論会が何回開かれるかを展望した記事を載せている。記事の趣旨はどちらも、挑戦者・石破氏が1回でも多く討論会をやろうとしているが、安倍氏サイドはあまり乗り気ではない、という内容だ。
しかし朝日の見出しは「論戦したい石破氏 敬遠したい首相側」なのに対し、読売は「石破氏 焦がれる直接討論 首相訪露で機会減」となっている。朝日の方は、安倍氏側が論争を逃げようとしている姑息(こそく)さをにじませているのに対し、読売の方は形勢不利の石破氏が焦っているという印象を持たせる見出しだ。
一連の報道の中で石破氏は、自分に批判的なメディアに対して宣戦布告したともとれる。
安倍氏はまだ正式に出馬表明をしていないので、総裁選にからんでメディア批判はしていないが、実際に選挙戦が始まれば、石破氏への批判とともに「得意」の朝日批判も始めることだろう。メディアを巻き込んだ論争は今後激化する。
「ゴリゴリの改憲派」の石破氏が、護憲派に推される展開に
朝日を筆頭に毎日、東京といったリベラルな新聞は、今回の総裁選ではどういう立ち位置なのだろうか。この3紙は、「森友」「加計」への対応や、強引な国会運営を、手厳しく批判してきた。総裁選でも安倍政権の軌跡を厳しくチェックするのは必定だ。そして相対的に石破氏に好意的な報道となる。露骨に持ち上げることはないだろうが、先に触れた候補者の公開討論についての記事のようにニュアンスとしては石破氏寄りになる。「敵の敵は味方」ということだ。
石破氏は、憲法9条の改正については、戦争放棄を定めた2項を削除すべきだという立場。2項を維持して自衛隊の存在を明記するという安倍氏の考えよりも抜本的な改正を主張している。ゴリゴリの改憲派だ。護憲派の読者に支えられる新聞としては、石破氏は「天敵」のはずだが、ねじれが起きているのはどういうことなのか。