ある広告代理店の担当者にキレた話

大切なのは心の準備である。「もしも今日、理不尽なことを言われたらそこで私はキレる」と覚悟を決めるのだ。心の準備をしておけば、案外すんなりと激怒することができる。

ときには部下を守るために、瞬間湯沸かし器のごとく激怒することも必要だ。私は大学の同級生でもある女性(Y嬢)と2人で編集プロダクション的な会社を経営しているが、彼女に対して失礼なことを言う大企業の人間がときおり出てくる。いまだに「大企業=エラい、中小企業=見下すべき対象」と考えている人間がいるのだ。決して数は多くないが、これまでの経験的にいうと、数年に一度くらいの頻度で出現する。

とある大手広告代理店と仕事をしたときのことだ。我々は広告用の原稿執筆を受注し、Y嬢が窓口となって代理店の営業担当とやり取りしていた。そして、提出した原稿に対し、修正指示を受けた。それ自体はよくあることだが、その担当者は余計なことまで口にしだしたのだ。

罵詈雑言が終わらない

「なんで、オタクは○○社(クライアント)のことをこうも理解できないのかね。日々、○○社に通って先方のことをよく理解している私が、これまでさんざん説明してきたのに、なんで原稿に“安全への配慮をやり尽くしてきた○○社”なんて文章が入るの? あのね、○○社の取り組みに“やり尽くす”なんて状況はないの。○○社はこれからも“やり続ける”の。“やり尽くす”だったら、もうこれからの進化がないでしょうよ。エッ! オタクが出してきたその軽率な文章がね、私がこれまで○○社に対して粉骨砕身、忠誠を尽くして積み上げてきた実績を一瞬でパーにするかもしれないんだよ?」

それまでも鼻持ちならない態度をとることが多い担当者だったが、いざ文句を言い始めたら堰を切ったように「オマエらは無能である」と罵ってきた。というか、別に“作品”をつくっているわけでもなく、販促物をつくっているのだから、進行管理者たる彼の判断で自ら修正・調整を施せばいいのだ。その後「やり尽くしてきた」はNGワードであることを、我々に淡々とメールで説明すれば済む話である。少なくとも、妙な信用問題を持ち出して、ツベコベ文句を言う必要はないと考えるが、彼の話は止まらない。

「オタクみたいな仕事ができない2人ぼっちの会社に任せた結果、もしもウチがアカウント(ざっくり言えば「取引先」のこと)を失うようなことになったらどうするの? だいたい、オタクはあんまり○○社の人の前でも笑ったりしないしさ。こうやって原稿も稚拙だしさ。とにかく○○社のことを、私ほどとは言わないまでも、ちゃんと学んでよ。頼むからさ、ハァ……(ため息)」