在京キーTV局、朝日・産経、警察・消防に情報を提供

【田原】JX通信社は世論調査サービスもやっています。これも機械ですか?

【米重】コールセンターで一人ひとり電話するのではなく、自動で電話をかけて、その回答も自動で集計する世論調査を行います。その結果を分析して、選挙情勢予測も行っています。たとえば17年の都議会選挙だと、多くのメディアが自民党第一党という見通しを伝えていましたが、私たちの調査では17年1月以降、都民ファーストの会がずっとトップ。最終的な得票率も、各党2ポイント以内の誤差で当てることができました。

【田原】米大統領選でも、ニューヨークタイムズやワシントンポストは、みんなヒラリー・クリントンと言ってましたね。なぜ間違えたのかと上層部に聞いたら、部数が落ちて取材力が落ちている、つまりお金がなくてデトロイトなど中西部で綿密な取材ができなかったと言っていました。

【米重】報道は労働集約のビジネスで、従来のやり方ではどうしても人員が必要になります。既存メディアが都議会選挙で予測を外したのも、調査の回数が少なかったから。回数を多く行えばトレンドが見えてくるのですが、繰り返し調査するだけのコストをかけられなかった。そもそも都議会選挙のときは9社あいのり。世論調査にお金をかける余裕が本当にないんだなと思いました。

【田原】自動でやれば低コストで何回もできると思うけど、精度はどうですか。機械じゃ答えてくれない人が多そうですが。

【米重】たしかに昔は回答率が低くて、一桁でした。しかし、いまは音声合成で声の性別を変えたり、話すスピードに変化をつけられます。試行錯誤を繰り返した結果、回答率が飛躍的に高まりました。報道各社の人力の調査だと回答率は40~50%ですが、私たちの調査は50~60%になって追い越してしまいました。安くて精度が高いので、最近は自社の調査をやめてJXの調査を使う報道機関も増えてきました。

【田原】いま従業員は何人ですか。

【米重】24人です。エンジニアが3分の2で、残りの3分の1は営業や人事、広報などのビジネス系です。記者は1人もいません。売り上げは開示していませんが、いまは数億円規模。急成長しているので、いずれは10億円に乗せたいです。

【田原】将来性はどうですか。すでに多くの報道機関に利用されているとなると、成長できるかな。

【米重】顧客を報道機関に限る必要はないと考えています。事件や事故、災害の情報を欲しがるところは案外多いですから。たとえば警察もそう。17年、福岡のスーパーで屋根の廂(ひさし)が崩れ落ちた事故がありましたが、ファストアラートに入ったのが5時8分で、警察に通報があったのが5時35分。つまり最近の人は通報するより先にSNSにアップしてしまう。現実がそうなっているので、警察も通報を待つだけでは不十分だという考えになりつつあります。具体的なことは明かせませんが、いま各方面とお話ししています。