ツイッターで、報道する価値ある情報を探す

【田原】取材を機械化するってどういうことですか。

【米重】最近、ニュースソースとしてSNSが活用されるようになりましたよね。たとえば豪雨でどこかの地域が冠水したとします。従来は警察や消防の発表があってはじめて報道機関は冠水の事実を知り、そこから現場に取材に向かっていました。しかしいまはSNSにさまざまな目撃情報がアップされているため、警察や消防の発表より早く冠水の発生を知ることができるようになりました。ただ、SNSにアップされる情報は膨大で、常時監視しようとすれば何人もの人間が必要になってしまう。そこを機械化できればコストを下げられるかなと。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。本連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

【田原】SNS上の情報から事件や事故がわかるということ?

【米重】たとえば一般のユーザーがツイッターに投稿した画像があります。その画像を見ると、横転した車を囲う警察官の様子や、警察官の制服の背中の文字などから、大阪で交通事故が起きたことがわかる。そういった情報をAIが自動で解析して配信。それを見たテレビ局や新聞社は、警察や消防に取材したり、現場までいってウラを取ります。最近は画像を投稿した人に報道機関が直接アプローチして、画像を使わせてもらうことも多いですね。

【田原】分析に使うSNSは何ですか。ツイッター?

【米重】はい、ツイッターが90%以上を占めています。インスタグラムやフェイスブックと比べると、ツイッターのユーザーはリアルタイムに情報をアップする習性が強いので。

【田原】なるほど、リアルタイムか。現場をいま見ている人が投稿するから、警察発表よりスピードは速いね。

【米重】最近だと東海道新幹線車内での殺傷事件がありましたが、あの事件の目撃情報もほぼリアルタイムで私たちの提供するファストアラートに入ってきました(対談は2018年6月11日)。警察発表より30~40分は早かったんじゃないでしょうか。ファストアラートには、もう1つ、埋もれがちだったニュースを掘り起こせるメリットもあります。たとえば警察は事件情報を何でも積極的に公開してくれるわけではありません。しかし、SNS上には公的機関や企業が出し渋る情報が出ていることが多々ある。日大アメフト部の事件も、ネットで騒がれてからテレビで報道されるようになった。今後はさらに同様のケースが増えていくはずです。

【田原】投稿情報から、何が起きたのかを解析する技術はわかりました。でも、SNS上にはニュースになりそうな公共性の高い情報から、ニュースにならない個人的な情報まで、さまざまな情報が溢れています。ニュースになるかどうかはどうやって判断するの?

【米重】そこもAIです。過去に報道で取り上げられた情報と重なるところが多ければ、報道価値があると判断してファストアラートに乗せます。