悪徳業者よりタチの悪い、素人業者が急増

今、高齢者住宅には倒産ラッシュが起きている。2016年の老人福祉・介護事業者の倒産件数は初めて100件を突破。また、廃業や登録取り消しの申請をしたサービス付き高齢者向け住宅は263件にものぼった。濱田氏は「事業計画の甘さ、介護スタッフ不足などの要因が重なり、倒産や廃業がさらに増えることは確実」と予測する。

2016年の負債総額は94億600万円。倒産は負債5000万円未満の小規模事業者が全体の約73%、設立5年以内の事業者が半数を占めた。

「倒産が多い理由は、素人業者が多いから。『儲かりそうだ』という軽い気持ちで、介護に関する知識も経験も経営ノウハウもなく、他業種から安易に参入してくる。認識が甘いうえに意識が低く、ある意味、悪徳業者よりタチが悪い。個人的な感覚として、事業者全体の半分弱を占めるのではないでしょうか」(同)

自分が入居した有料老人ホームが倒産した場合はどうなるのか。有料老人ホームは「敷金・保証金」「一定期間の家賃の前払い」を含んだ入居一時金を払うのが慣習になっており、それが返還されないことがある。

「入居一時金は500万円を上限に保全することが法律で義務付けられていますが、守っていない業者も存在し、返還されないトラブルも起きています。また、有料老人ホームは利用権契約といって、借地借家法の適用外になるため、事業者が倒産すれば、出ていかざるをえません」(同)

一時金も戻ってこないうえに退去を迫られるとは、泣きっ面に蜂だ。こうした悪質な事業者の倒産に巻き込まれないためには、入居時の見分け方が何より大事になる。

「見分けるコツとして、「『大丈夫です。お任せください』『すぐ入居できます。細かいことは入居後に』などの美辞麗句、曖昧な説明が多い事業者は要注意。プロの事業者ほど介護の難しさやリスクを知っているので、できないことは『できません』と説明します。転倒への対策や、月額費用以外に必要な金額など、具体的なリスク・トラブル・対策の説明ができる業者なら安心です」(同)