18年の春闘では、「3%賃上げ」が実現するかどうかが争点になっている。企業の業績が好調ならば、給料にも反映されると期待したいところだが。

「ほかの条件を一定とすると、株価が上がるほうが、給料は上がります。ただし、今の相場は企業が人件費を抑えて利益を増やし、自社株買いを行うことに支えられている側面がある。もっとも、人手不足が続けば、給料が押し上げられる可能性は十分あります」(山崎氏)

金を稼ぐよりも、いかに満足感を得られるか

厚生労働省によると、17年12月の有効求人倍率は1974年1月以来、およそ44年ぶりとなる高水準をマークしている。人員確保のため、最も手っ取り早いのが給料の増額なのである。

写真=iStock.com/Sean_Kuma

「ただし、人工知能や技術の進歩により、格差は広がる一方です。多少給料が上がっても生活は楽になりません」(山崎氏)

それでは、八方塞がりはどこまで続くのか。

「率直に言って先行きはますます不透明です。確実に言えるのは、価値観が多様化し、世界の潮流は統合から分散へと向かっていること。これまでは『金を稼げるかどうか』が非常に重要な位置を占めていました。しかし、30年後には稼ぐことより、満足感を得ることに対するプライオリティが高まっている可能性もあります」

こう解説するのは大和総研のチーフエコノミストの熊谷亮丸氏である。

「短期的にはお金にならなくとも、“やりたいこと”を優先する。世界的な潮流もこうした姿勢が重視されつつあることは認識しておく必要があります」(熊谷氏)

だが、先立つものがなければ、手も足も出ないというのも多くのサラリーマンが抱える“今そこにある危機”だ。

山崎 元(やまざき・はじめ)
経済評論家
1981年、東京大学経済学部卒。楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。共著に『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』など。
 

熊谷亮丸(くまがい・みつまる)
大和総研常務執行役員チーフエコノミスト
1989年、東京大学法学部卒。日本興業銀行調査部などを経て2007年大和総研に入社。共著に『この1冊でわかる 世界経済の新常識2018』など。
 
(撮影=岡田晃奈 写真=iStock.com)
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