「銀行のほうが安定し、いい会社なのになぜ?」

【安井】木南さんとの出会いが新たな挑戦を促したのですね。千本さんの人生をみると、出会いはとても重要です。

【千本】何かを選択し、決断する時にはいつもキーパーソンとの出会いがありました。心の中で火がつくのは誰かと会わない限り難しいのではないでしょうか。心は、自然発火しません。

私がNTTを飛び出し、第二電電をつくろうと思ったのは京セラの創業者、稲盛和夫さんと出会ったからです。もしも関西勤務をせず、稲盛さんとの出会いがなければ、今の私はいません。人生とは結果からみると、自分の選択も大切なのですが、誰かに導かれているのではないかと思います。

【安井】政府のエネルギー基本計画をみると、再生可能エネルギーに対する考え方は大きくは変わっていません。

【千本】世界で大変革が起きているのに日本は依然として原子力を「重要なベースロード電源」と位置付けています。それでは世界の潮流についてはいけません。再生可能エネルギーに大きく舵を切るべきです。若い人には世界を見て、正しい将来像を見つけてほしいと願っています。

今年レノバに入社した若者からこんな話を聞きました。日本のメガバンクとレノバから内定をもらった彼がレノバに就職すると母親に言うと、母親に泣かれた、というのです。「銀行のほうが安定し、いい会社なのになぜ名前も知られていないようなエネルギー会社に行くの?」とお母さんに言われたそうです。

【安井】就職に対する考え方は親世代だけでなく若い世代もまだまだ保守的ですね。銀行の将来は安定かというと決してそうではない。ビットコインなどが発展するとこの先、日本の銀行の将来像はどう描けるのか、未知数です。

【千本】日本人の将来に対するリスク感覚は正しいとは思いません。大きな会社で働く方がリスクは少ないと信じ、銀行はいつまでも安定しているとみているようです。一見、リスクはないように見えても、とても大きなリスクを抱えていることに気がついていないのです。