若い人が使いたい、金融機関のカタチ

【田原】話を戻しましょう。団体をやめて、ビジネスを始めたのですか?

【山内】じつは事業は中1の頃からやろうしていたんです。ただ、つくったサービスがビックリするほど誰も使ってくれなくて失敗しました(笑)。

【田原】どんなサービスをつくられたの?

【山内】学校の授業って、つまらないものもありますよね。だから学生の投票で新しく授業をつくるサービスをリリースしてみたのですが、十数人しか投票してもらえなくて。大失敗です。ただ、そのとき使っていたシェアオフィスにdelyの堀江裕介さんってヤツがいて、あっ、ヤツって言っちゃダメですね(笑)、堀江さんという人がいて、「うちに来なよ」と誘ってもらいました。だから12歳から報酬をもらって働いていました。

【田原】堀江さんとはこの連載でお話ししたことがあります。料理動画「クラシル」の会社だよね。

【山内】当時はフードデリバリーの事業をやっていました。僕は注文を受けるお店側の管理画面をつくっていました。やっていたのは半年くらい。そのあとはいろんな会社でプログラマーとして仕事をしていました。

【田原】仕事となるとお金が発生して責任も生じるでしょ。ご両親は何て言ってたの?

【山内】とくに何も。学校とはきちんと両立していたので、せいぜい「無理しないでね」と言われたくらいです。僕自身、部活感覚だったし、親もそれはわかっていたのかなと。

【田原】そのあとはどうしたんですか。

【山内】手伝った会社の1つに、海外リサーチの会社がありました。たとえば海外ではどんなスタートアップが生まれているとか、どんなトレンドがあるかを調べて、投資の判断材料として他社に提供する会社です。そのときアメリカやイギリスのIT企業が、スマホで完結する銀行をつくろうとして銀行業のライセンスを取ったという情報を見ました。金融は古くて大きな業界ですが、それをインターネットやデザインの力で変えようとしているのはおもしろい。自分もフィンテックで何かやりたいと思って、ビットコイン銀行のサービスを立ち上げました。それが15歳のときです。

【田原】ビットコインの銀行って、どんなものですか。

【山内】ビットコインで送金、預金、決済ができるサービスです。決済はイシュアーと呼ばれるカード発行会社と提携する必要があって、提携するには会社組織にしなければなりませんでした。そのときつくったのがいまの会社です。

【田原】そして17年、1億円の資金調達をして、「ONEPAY」というサービスをつくった。これがビットコイン銀行?

【山内】いや、これは別の電子決済サービスです。通常、カード決済するにはお店側にカードの磁気テープを読み取る端末が必要になります。でも、端末は高いから、たとえば田舎の小さな八百屋さんなんかにはカード決済が普及していません。レシートのところでもお話ししましたが、決済の情報はお宝です。それなのに端末が高いせいでデータ化されていないのは問題だと思って、端末なしでカード決済できるサービスをつくりました。

【田原】具体的にどうすれば決済できるの?

【山内】スマホにアプリをインストールして、カード番号を撮影。その情報をカード会社のサーバーに送って処理します。初期費用は無料で、決済のたびに5%の手数料をもらう仕組みでした。

【田原】これはうまくいったの?

【山内】日本国内で3500店舗に入れてもらいましたが、収益化が難しくて、18年の春にサービスを終了しています。

【田原】そしてその次がレシート買い取りサービスになるわけですね。いまはいろんな事業を試している段階だと思いますが、山内さんは将来、どんな事業をやりたいんですか。

【山内】ひとことで言うと、次世代の金券ショップをつくりたいです。いまの金融機関は何でもできて量も重すぎるから、若い人にはかえって使いづらいんです。たとえば夏休みだから遊びにいくのに5万円借りたいと言っても、銀行は貸してくれません。そんなとき、僕らの世代の人がどうするかと言えば、メルカリでバッグを売ったりするわけです。同じような感覚で若い人が身近に感じられる金融機関をつくるのが僕の夢です。