女医は「出産前に一人前に育てる」のが鉄則

【女子高生に医大が大人気の理由】

一方、女医を目指す女子高生は増加の一途である。元子役で慶應義塾中等部に進学した女優の芦田愛菜さんも「病理医になりたい」と、何度もインタビューに答えている。「ドクターX 外科医・大門未知子」など女医を主人公にしたドラマが目立つことも背景にあるかもしれない。

写真はイメージです(写真=iStock.com/Image Source)

また「日本型エリートコースは、女性には厳しい」というイメージも影響しているだろう。2015年に東京大学を卒業して、大手広告代理店・電通に入社するも、1年目に過労自殺へ追い込まれた女性のケースは象徴的だ。外務省・総合商社・外資金融も辞めたら「タダの人」だが、医師はライセンスがあるため復職も容易である。

医療界も依然として男社会だが、日本社会の中では比較的マシという判断は間違いではない。医師は「週1回パート勤務」でも医師と名乗れるので、開き直ってしまえば世間体も良く、女性であれば出産後も効率よく稼げる。

ゆえに、女医の時短勤務を整備すると女性受験生が殺到して、カバーしてくれるはずの男性をはじき出してしまう可能性が高まる。こうしたジレンマが「医大合格者の女性率を制限する」という動きにつながっている。

【新研修医制度を廃止すれば解決するのか】

医大教員としての経験から言うと、男性が「大器晩成」ならば、女性は「中器速成」だと感じている。18歳の時点では女性のほうが早熟で目的意識もはっきりしており、器が固まる(ある意味、限界に達する)のも女性のほうが速いような気がする。ゆえに、女性のキャリア形成は「就職から妊娠までの黄金期はハードに働いてスキルを磨き、出産前に1人立ちできるよう育てる」というのが鉄則だと考えている。

2004年に厚生労働省が創設した新研修医療制度は、いわば「医大卒業後2年間は数カ月ずついろんな科を担当させ、お客様扱いでユルく研修する」といった内容で、これにより専門科のトレーニング開始が遅れるようになった。制度が変わっても、高齢出産の医学的なリスクは変わらない。35歳までに出産を終えたいならば、この2年間のモラトリアムが、女医のキャリア形成にとって痛いのだ。

仮に自身の出産を優先する女医の場合、専門家として鍛えてもらえる時間が少なくなるため、結果的に「一生、使い物にならない医者のままで終わる」というリスクが高まるからである。

また、新研修医療制度で、卒業後2年間は「お客様扱い」することになったので、大学病院としては若手医師を病院経営のマンパワーとして使いづらくなってしまった。この結果、医師不足が深刻化し、「女性減点入試」の契機になったのではないかと推察している。8月6日の調査委員会による記者会見でも、得点調整について「2006年頃からの可能性」を指摘している。

「女性減点入試」を解決する方法としては、新研修医制度を廃止することもひとつの手だろう。新制度で失われた2学年分のマンパワーをどうすれば復活できるか、を考える必要がある。