社員の出戻りを受け入れる企業が増えている
これまで企業を辞めて転職することは、「許されざる脱走」と捉えられがちでした。しかし転職市場が活性化し、「優秀な社員ほど辞める」という状況に変わるなかで、広く社員の「出戻り」を受け入れる企業が増えています。出戻り人材は他社で「他流試合」を経験してスキルアップした人材という評価に変わっているのです。
こうした変化をとらえ、自己のキャリアをさらに上を引き上げていくために、企業を渡りあるくことは、「卒業」と言い換えられ、ITエンジニアなど専門性の高い職種を中心に評価されることが増えています。
それでは転職が、不本意な「脱走」になるか、それともキャリアを作る「卒業」となるか、その違いはどこで生まれるのでしょうか。
私は「勤めた企業をポジティブに思いながら退職した」という点が重要ではないかという仮説を立て、540万件の「会社評価」を集積しているクチコミサイト「Vorkers」のビッグデータを分析しました。分析対象は、2017年に「Vorkers」に掲載されたクチコミのうち、すでに評価対象の企業を退職した人のクチコミです。
「退職の理由」はネガティブなものだけではない
この結果、総合評価スコアとして退職企業に5点満点で4.0以上を付けた人、つまり「勤めた企業をポジティブに思いながら退職した人」は、全体の6.04%でした(スコアの平均値は2.89)。この人たちを本稿では「ポジティブ退職者」と呼びます。
一般的に、転職は職場への不満から起きるアクションです。政府の「雇用動向調査」(2016年)の「前の勤め先を辞めた理由」によれば、会社都合・定年・転籍などの転職以外の理由を除いた転職理由の上位3つは、「給料等収入が少なかった」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「職場の人間関係が好ましくなかった」となっており、いずれもネガティブな理由です。
「Vorkers」に書き込まれた退職検討理由も、労働環境、待遇面、人間関係、社風、会社の将来性への不安など、さまざまな不満がつづられています。
ただし、「ポジティブ退職者」はネガティブな理由から退職しているわけではありません。具体的には「挑戦できる環境を求めて」といったチャレンジのための退職や、「成長したいため」といったキャリアを充実させるための退職、「やりたいことが見つかった」という探求型の退職などがあります。