若手は作業者として、上司からコキ使われるもの

若手が予定どおりに動けない原因は「会議の主導権を持たない」ことだけではない。仕事全体の指揮を執る上司にかわり、作業マンとして、資料や書類をそろえたりする必要があるからだ。上からダメ出しをくらえば、再リサーチや修正作業をしなければならない。「いま会議で話し合ったこと、すぐにパワポに落とし込んでおいて。明日の朝イチでチェックするから」などと、急に仕事が振られることもある。そうなると当然、残業することになり、後の予定に遅刻する。これもまた、若いうちはよくある光景である。

ただし、40代になっても遅刻やドタキャンを続けているようでは、その能力に疑問符をつけざるを得ない。そして「やはりな」という感じなのだが、遅れるのは毎度同じ人なのである。起業家の家入一真さんのように「僕は時間管理が苦手で遅刻をしがちです。そこのところは理解しておいてください」みたいなことを公言する人ならばともかく(あと、彼はそのキャラが許されている)、通常は遅刻しないに越したことはない。

……と、ここまで書いて気が付いた。家入さんは、少なくとも私との約束に遅刻したことなど、これまで一度もなかった。このように、表向きは“遅刻キャラ”の印象が強くても、実際にはそんなに遅刻していない、というケースは多い。それを踏まえると「あの人が遅刻を許されているのだから、自分だって構わないだろう」などと居直るのは実に浅はかであり、何の言い訳にもならない。

「仕事のコントロール権」を持つ人は遅刻しない

私の経験上、職場で認められている人ほど遅刻はしない。それは「仕事のコントロール権」を握っているからである。冒頭で「40分遅刻するエラい人」を紹介したが、この人は職場では認められているものの、「下っ端は待たせてもいい」「オレは遅れても許される」「オレ様が会議に参加してあげるのだから待つのは当然」というゴーマンな考えを持っているがゆえの行動なので、これはまた別の話だ。

仮に部下から上がってきた書類がダメな内容で、自分がそれを直すにも時間がかかると考えた場合、権限があり、かつ合理的な判断ができる人ならば、提出先に対し「まだ“揉みたい”ので、恐れ入りますが明日の15時までお待ちいただけませんでしょうか」といった連絡を入れ、とりあえずその場は一区切り付けてしまう。そして、予定どおりに次のアポへ向かう。次のアポとは仕事かもしれないし、合コンかもしれないし、デートかもしれないが、その中身はなんだっていい。それが許されるだけの実績と信頼感があるのだ。

若者が仕事でテンパってしまい、遅刻することを伝える電話口で「本当にすみません、すみません!」などと申し訳なさそうにしている姿は、オッサン、オバサンからすればかわいいものだ。

「上司から『資料をすぐに書き直せ!』とか言われたのだろう」「客先のわがままな担当者から『社内会議が明朝に変更になったので、今晩中にデータを送ってほしい』なんてむちゃぶりをされたのかな」と、自分の若いころの経験を重ね合わせて、察することもできる。また、そんな若者が予定よりかなり遅れて酒席にやってきたとき、息を弾ませ、汗をダラダラと流しでもしていたら、「おぉ、頑張ったんだな」とほほ笑ましく感じる(このテクニックは使えるぞ)。