さらに、コンビニにはもう一つ“宝の山”がある。圧倒的な数の顧客接点があることから得られる、顧客の消費行動などのビッグデータだ。ファミマはこれまでカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が手掛ける「Tポイント」と連携してきたが、貴重な情報を外部に出してしまっていること、またそれゆえのデータの使い勝手の悪さや利用料の支払いなどの問題があった。

伊藤忠は子会社化を機に、CCCとの契約見直しも検討していると見られる。政府は2025年までにキャッシュレス比率を40%に上げ、さらに80%を目指すという目標を掲げている。この流れの中で、現状のポイントカードを廃止、スマホアプリへと代替し、キャッシュレス決済機能を高めていく狙いもあるのではないか。こうした、ビッグデータと絡めた金融プラットフォームの構築を目指して動いていくだろう。

一方で、既存のコンビニ事業という観点で見たとき、この子会社化によって両社に大きなメリットや相乗効果が生まれるとは思えない。商品の仕入れなどが親会社である伊藤忠に偏るようなことが起きれば、ほかの取引先から距離を置かれることも起こりえる。もし仕入れ先が限定されるようなことがあれば、それは商品力の低下にもつながりかねない。事実、一足先に三菱商事の子会社となったローソンも、その後業績が向上したような側面は見られない。コンビニという業態において、商品戦略の自由度が下がるリスクを招く行為は、決してプラスとはみなされないのだ。

日販ではいまだセブンに追いつけず

コンビニ事業でメリットとして挙げられる部分があるとするなら、海外戦略は考えられる。コンビニにとって、原材料調達は経営を考えるうえで重要なポイントだ。また店舗の拡大といった面でも、ここ数年はサークルKサンクスの店舗をファミマに転換させていくことなどで忙殺され、海外展開に人材を割く余裕はなかった。原材料調達はまさに商社の得意とするところであり、海外戦略でも伊藤忠のノウハウやネットワークを活かせるのであれば、これはファミマにとって大きなサポートとなるだろう。

2016年にサークルKサンクスと合併したことにより、店舗数は約2万店のセブン-イレブンに迫る、約1万7000店という規模にまで拡大した。しかし日販では1店舗あたり平均65万円といわれるセブンに対し、ファミマは52万円程度と見られている。まだまだ大きな差があると言わざるを得ない。

伊藤忠は、既存のコンビニ事業については海外展開でサポートする程度にとどめ、現場には余計な口出しをするべきではないだろう。今回の子会社化は、あくまで将来を見据えた、長期戦略にのっとって行われたもの。成功かどうかの可否は、10年後20年後を見てみなければ判断できなさそうだ。

(構成=衣谷 康)
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