▼幸せになる練習 Lesson 2

「経済学は数式モデルを偏重した結果、現実離れしたものになってしまいました。くわえて、想定された『合理的経済人』のモデルにおいては、人の幸せも軽んじられ、金銭至上主義が支配的になった。しかし、経済学はそもそもの出発点が、どのような経済状態が幸福に結びつくかの考察だったはずです」(同)

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では、行動経済学から考える「幸せな人生」とはどのようなものなのだろうか。そもそも「幸せな人生を送りたい」と考えたとき、どんな状態が幸せなのかを具体的に想像することは難しい。「ならば、とりあえずはお金を稼げるだけ稼いでおこう」という結論に至ることもあるだろう。だが、お金を稼ぐことが幸せにつながるかというと、どうやらそうではない。

幸福度と所得の関係を調べた調査では、所得が低いうちは、稼ぎが増えるにつれて幸福度も上昇する。しかし、所得増による幸福度の増加は、頭打ちになることがわかっている。

「稼ぐこと自体が目的化すると、ストレスがたまったり、時間がなくなったり、人付き合いが悪くなったりと、マイナス要素がいっぱいあります。トータルで、稼いだ以上にマイナスが大きくなる危険性もある。だから、無理のない稼ぎ方、プラス『いい使い方』を身につけることが重要なのです」(同)

友野教授が指摘する「いい使い方」とは、ずばり「コト消費」を指す。衣食住をはじめ、必要なものが全部足りている状態においては、新しいものを買い込むよりも、何らかの体験・経験にお金を使ったほうが高い満足度が得られると証明されている。ここ数年「モノ消費」よりも「コト消費」が重視されつつあるが、その背景には行動経済学による裏付けもあったのだ。

稼いだお金の使い方だけではなく、稼ぐためにどのように仕事をするかも、人生に大きな影響を与える。上司から振られた仕事をただこなすだけの仕事よりも、権限を与えられ、何をするべきか自分で決めたほうが仕事に対する満足度は高くなる。

「就職でも同じことがいえます。最近の学生は親の期待を裏切りたくないという気持ちが強くなっているように感じますが、親がすすめる大企業に就職するのと、たとえ有名でなくても自分で決めた企業に就職するのとでは、あとあとの幸福度に違いがある。不幸にも選んだ企業を間違えたと感じたとき、親の言いなりになって決めてしまっていたら、その後悔は非常に大きくなります」(同)