これから30年程度は働かなければならない
ここまで工藤さんというペルソナをもとに、ロスジェネの現状を見てきた。工藤さんはこの世代の中では幸福な人生を送っている。しかし「人生100年時代」と言われる長寿の時代、ロスジェネにはこの先まだまだ様々なことが起こる可能性がある。
年金の受給開始が70歳超となることが現実性を帯びており、現在よりも長期間働くことが求められる最初の世代となろう。またITの一層の進展により産業構造の変化も一層進み、その影響も受けてていくことが予想される。
工藤さんの勤務先である自動車部品メーカーも、EVシフトやカーシェアリングが普及すれば、事業構造を大きく変えなければ生き残れない可能性がある。工藤さんをはじめとするロスジェネにとって、今後の技術革新と長い就業期間を鑑みれば、「正規雇用」は将来の幸福を約束するものでは決してないのである。
ではどうすればいいのか。
ロスジェネはまだこれから30年程度は働かなければならない可能性が高い。30年といえば、一昔前では大学を出てから55歳定年までの期間と大差ない。これから30年間をセカンドキャリアとして位置づけ、どのように働き、社会と関係を持っていくのか、そのためには自分でどのようにキャリアを創っていかなければいけないか、という意識をしっかりと持つことが重要である。
会社もこうした後押しをするために、様々な学び直しの機会を提供するとともに、学んだことを活かせるような人事システムの導入が必要であろう。現在、働き方改革が話題になっているが、こうした視点もいれた議論が必要ではないだろうか。
ロスジェネがセカンドキャリアで幸福感を感じるのに、現在の雇用状態が正規であるか、非正規であるかはあまり関係ない。今までのキャリアや自身の生活環境を振り返りつつ、学び直しをすすめ、これからどのようにキャリアを築いていくかが問われることになる。
三菱総合研究所 プラチナ社会センター 主席研究員
1989年早稲田大学大学院理工学研究科修了、同年株式会社三菱総合研究所入社、主に事業性評価や新規事業戦略立案に従事、2011年10月より「mif:生活者市場予測システム」を担当、15年10月より現職、17年10月より三菱総研プラチナ社会研究会事務局長