どんな性格の経営者が成功するか
ただ、結果として、投資で重要な要素は、やはり経営者です。いわば、投資先の経営者が本当に優れているかどうかが最大のキーであり、同時に経営者とその周りを固めている経営陣もよく見極めることが必要になってきます。
私はこれまでエンジェル投資家として、多くのベンチャーに投資をしてきました。そこで得た大事な教訓は経営者の人間性を見極める目を持つことです。ベンチャーで典型的に失敗するケースは、経営者が自信家で大胆な人の場合です。とくに天才的でイケイケドンドンの経営者は必ず失敗する。むしろ成功する経営者は慎重な人が多いのです。慎重な人が慎重なうえにも慎重に考えたうえで決断する。KDDIの共同創業者であり、私が尊敬する京セラの稲盛和夫さんなんて一見大胆なように見えますが、実は人の3倍くらい慎重な人なのです。
しかし、慎重なだけでは成功できません。慎重でありながら、大胆にリスクをとっていくことが必要です。
そもそも人間は、慎重か、大胆かのどちらかに分かれるものです。しかし、その中でも、わずかながらその両方を併せ持った人がいる。大きな成功を収めているのは、大抵そんな人たちなのです。非常に慎重だけど、やるときは大胆に動く。ただ、そのタイミングをどう見極めればいいのか。それが非常に難しいところです。
今を遡ること約30年前の1985年、その年は「電話革命」とも言われ、まさにインターネットが登場した90年代後半の状況とよく似ている年でした。実はその年の半年前に、私は第二電電(現KDDI)を創業しているのです。大きな波がやってくる寸前のタイミングでした。これが成功する大きなポイントになったのです。
大事なことは、大きな波がやってくる0.5歩前に動くこと。しかし、多くの賢い人は3歩先を見て、早く動きすぎて失敗してしまうのです。反対に0.5歩遅いと、今度は大企業を敵にしなければなりません。まさに直前まで慎重に準備をし、0.5歩先に波頭が見えた瞬間に、大胆に参入することが重要なのです。これを「参入の窓」と言います。ハーバード・ビジネススクールでも使われる言葉ですが、その窓が開くのは、実は6カ月しかないのです。