全国一律の「防災重点ため池指定」なんて無理!
今般の西日本大豪雨災害によって「ため池」が決壊し、被害が生じた。国のルールでは危険性のあるため池は「防災重点ため池」に地方自治体が指定して、周辺住民に周知させることになっていたらしい。この防災重点ため池に指定する基準(行動基準)は、今は地方自治体が作ることになっている。ところが広島県福山市などは基準では指定しなければならなかったため池について指定をしていなかったという。
このような事態を受けて、中央政府である農林水産省は、全国で一律の防災ため池指定基準を作ることを検討するとの報道があった。行政がやる、いつもの中央集権体制パターンである。
しかし、全国一律の防災ため池指定基準作りなど無理であろう。指定で重きを置く要素は、ため池の規模なのか、周囲に存在する民家の戸数なのか。ため池が存在する場所の環境によっても指定基準は異なってくるだろう。今回決壊して被害が発生した福山市駅家町のため池は山の中腹に存在したが、山の中腹と平地では環境が全く異なるので、指定基準が同一になるわけがない。
どのため池が危険で、周辺住民に知らせなければならない防災重点ため池にあたるのかの基準は、やはり当該自治体で決めてもらわなければならないだろう。もっと言えば、こんな基準をあえて作らなくても、各自治体、各地域で防災ハザードマップを作成するのであれば、地域に存在するため池の危険性などは十分認識できるはずである。今回のため池決壊による被害は、完全に福山市の責任である。逆に、中央政府が全国に点在するため池の状況を的確に把握できるわけがなく、そんな中で中央政府が、危険なため池の基準を作っても机上の基準になってしまうリスクが高い。
中央政府がやるべきことは、地方自治体との協議の場で、ため池を防災指定するのは地方の責任であることを明確化することだけだ。指定基準作りはあくまでも地方がやるべきことであって、被害の発生は全て地方の責任であることを国民に周知させるだけでいい。
(略)
この国を適切に引っ張っていくための組織マネジメントとして最も重要なキーは、中央政府と地方自治体の仕事の役割分担を明確化し、地方自治体がやるべき仕事については、首相や中央政府が、「それは地方の責任だ! カネの用意も含めてしっかりやれ!」と地方を突き放すことである。
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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.112(7月24日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【今こそ地方分権】児童福祉司配置基準、ため池防災指定基準の策定は国の仕事か? 地方は責任を引き受けろ!》特集です!