キャリアを重ねるに従って、わずらわしい友人や付き合いも増えていくもの。そんなムダなしがらみを整理する方法を、名伯楽2人が説く――。

人間関係とは、船底にこびりついたフジツボ

若いときは人脈がほしい。だから積極的に知り合いを増やす。だが30代後半、40代になると、「知り合いが多いことによるマイナス面」が目立つようになってこないだろうか。他人の悪口や仕事の愚痴を聞かされる。交際費がかかるわりに、一緒にいても面白くない。どうかすると借金の保証人を頼まれたりして、迷惑をかけられることも出てくる。

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そんなつきあいに時間を費やすよりは、仕事や家族との時間を大事にしたい……そう思ったら、「そろそろ人間関係を整理したほうがいい」というサインだ。

「人間関係というのは、自分という船の船底にこびりついたフジツボや牡蠣殻のようなもの。人生という海原を渡っていくうちにどうしても付着してしまうものですが、気になるなら自分で削ぎ落とせばいいんです」

そう語るのは作家で僧侶でもある向谷匡史氏だ。ただし、「好きなように削ぎ落とすことができるのはプライベートな関係だけ。仕事の人間関係は自分の好き嫌いで関係を断つわけにはいかない」とも。精神科医の保坂隆氏もこの見解に同調する。

「そろそろ定年が見えてくるような年齢になれば、嫌いな人とバッサリ関係を切ってもいいでしょう。しかし、40代まではまだネットワークづくりが大事な年代。特に起業や転職を考えているなら、社外の人脈づくりに励むべき。その一方でストレスをためないためにも、上司や同僚とは適切な距離をとることが必要になります」

3つの距離のとり方と、3種類の分類法

適切な距離のとり方として、向谷氏は武道の間合いである「近間」「遠間」「一足一刀の間」が参考になるという。「近間」は、刀を抜けば確実に斬られる至近距離。「遠間」は槍で突こうが刀を振り回そうが届かない距離。「一足一刀の間」は、一歩踏み込めば相手に届くが、一歩退けば届かなくなる程度の距離を指す。

「関係を断ちたい人とは『遠間』でつきあえばいいと考えがちですが、『近間』だった人を『遠間』にするときは慎重にしないといけません。もう顔も見たくないと相手に背を向けた瞬間、悪評を立てられたりするなど、『後ろから斬られる』ようなことがよく起きるからです。それを防ぐには、遠ざけたい相手でも会ったら笑顔で挨拶し、ちゃんと対峙して『一足一刀の間』を保つこと。向こうが頼みごとをしてくるなど一歩近づいてきたら、自分は一歩下がるというようにつきあえばいいんです」