「この方は次、偉くなられるな」と舞妓が感じる人

――会話はどうでしょう。一流と呼ばれる方は何かが違ったりしますか。

やっぱり話が楽しい方は、お座敷でも人気がありますよ。偉いお方でも、みんなが突っ込みやすい雰囲気を醸し出してはると場が和みます。叱られても喜んでたり、そんな自分を「僕は人気があるんや」と冗談にしてしまったり。そういう人だと、お座敷も明るくなります。職場でもきっとそういう感じで、みんなに接してはるんやろうというのが想像できます。若い方を連れてみえても、偉そうに言わはるんじゃなくて、相手の話をちゃんと聞く、いい上司さんなんやろうというのが伝わってきます。人間的にそういう振る舞いを備えてはる方は素敵ですね。

――まめ鶴さんが印象に残っているお客様はどのような方ですか。

4月上演「都をどり」。「雪女王一途恋」主役の衣装で舞うまめ鶴さん。

やっぱりトップに立たれる方はいろんなところに、自然に気配りをされています。お仕事の難しい話をされながら、あたしらも交えて楽しい話をされたり、言葉にもユーモアがこもっているんですね。そして決して偉そうな態度はされない。ほんまに勉強させられることが多いです。

私も小さいとき(仕込みさん=舞妓になる前の修業期間)は、大きいお姐さんの前で緊張したり、気がつかへんで注意されたりしたんですけど、そういうのも、さり気なく見てはるんですね。その場では何も言わはらへんのですけど、次にお目にかかったときに「お姐さんの言うこと聞いて稽古がんばって、ええ芸妓さん、舞妓さんになりや」と声をかけてくださる。こういう励ましは、守られてる気持ちになります。その後、ご贔屓にしていただき、お座敷に呼んでもらえるようになります。そういうことがあると、やっぱり嬉しいもんです。

――ところで、偉くなられる方は見ているとわかるものでしょうか。

はい、上司の方と一緒に見えられても、この方は次、偉くなられるなというのは感じます。例えば、上の人の目ばっかり気にしてる人だと「この人、何してはんのやろ」と思います。上司にばっかり気を遣うんじゃなくて、若い子たちにも気配りされる方がいらっしゃる。何でもないことでも、こまやかに気遣いされるんです。上下関係なく誰にでも優しい人は偉くならはります。

でも偉くなっていくと、どうしても上から目線で言うてしまうことってありますよね。私らでも反省することがよくあります。ついつい「そんなことしたらあかん」っていうふうに言うてしまいます。けど、偉いお方というのは、そういう言い方をしはらへんのです。もちろんお仕事とかは厳しいと思いますよ。そういう厳しさと、優しさを持っておられる方がやっぱり上にいかはるんやと思います。ただ優しいだけでもあかんし、男性として尊敬されるところがあって、厳しさと優しさを持っておられます。

やっぱり偉くなられる方は、器の大きさが違いますよね。たくさんの社員さん、ご家族さんを抱えてはるんやから大変です。トップになればなるほどご苦労も多い。そのご苦労を忘れ、遊びに来ていただくのがお座敷です。私らは2、3時間ご一緒させていただくだけですけど、「今日は楽しかった」と言って、ホッとして帰っていただけたら嬉しいですね。

(文・構成=篠原克周 撮影=福森公博 写真=The Asahi Shimbun/Getty Images)
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