経済が停滞し人口減に悩む現代ニッポンの「奇跡」

噂のバーベキューができる席だけでなく、多種多様のユニークな座席がある。たとえば、寝そべって見られるエリアや、仲間たちと宴会のようなことをしながら試合観戦ができるシート、さらに、グラウンドと同じ高さで、迫力あるシーンが楽しめる砂かぶり席など。子どもたちのための遊びのエリアもあって、私が訪れた日は、恐竜ロボットに乗ったり、すべり台で楽しんだりしていた。

もちろん、ずっと自分の座席で熱心に応援されている方々もいる。試合展開が白熱すると、皆、選手たちのプレーに釘付けになる。

その一方で、「ボールパーク」の名にふさわしく、みんながそれぞれの時間を楽しめる「公園」になっていることに、大いに感心した。

関東や関西に比べて、地域人口が少ない広島周辺で、チケットが毎試合売り切れの人気の秘密がわかったように思った。

まずは、「楽しめるイベント」としての充実。多様なスタジアム設計や、ゆったりとした時間や空間の演出によって、伝統的な野球を超えた、「野球コンサート」とでもいうべきエンタメに進化している。そして、多くの人がユニホームを着ることによる一体感。毎試合、自分が「共同体」の一員であることを確認できる熱い「祭り」になっている。

広島カープの試合を中継する地元のテレビ局の視聴率は、大変高い数字を記録しているのだという。

経済が停滞し、人口減に悩む地域が多い時代、「広島カープの奇跡」に学ぶべきことは多いと感じた。

(写真=AFLO)
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