かつてゴーン氏は完全統合に抵抗した
仏政権はかつて両社の統合を強硬に推し進めようとした。オランド政権下で15年には2年以上保有する株式の議決権を2倍とするフロランジュ法により、経営統合を強引に進めようとした。その急先鋒が当時、経済産業デジタル相だった現在のマクロン大統領であり、その姿勢はいまも変わりがないとされる。マクロン政権が今回のゴーン氏の続投に条件を提示したのはその何よりの証拠でもある。
オランド政権下での要求に、ゴーン氏はルノー・日産連合についてそれぞれの独立性を尊重し、完全統合に徹底的に抵抗した。しかし、ゴーン氏は最近、「どうして(経営統合が)ないといえるのか」と微妙な言い回しで心境の変化をうかがわせている。
実際、3月1日にルノーと日産の主要部門の機能統合の拡大を発表し、「研究開発」「生産技術・物流」「購買」「人事」の4機能の統合を加速した。4月には三菱自を購買や事業開発などでルノー・日産連合による機能統合に加え、「不可逆的関係」の構築に布石を打ったにも取れる。
ルノーと日産の関係は、経営危機に瀕した日産の救済にルノーが手をさしのべ、1999年に子会社とした日産に「ミスター・コストカッター」で名をはせたゴーン氏が最高執行責任者(COO)として乗り込み、系列の見直しや徹底した合理化で日産を見事によみがえらせた。2005年にはルノーのCEOに就任し、20年近くの長きにわたって強力な求心力でルノー・日産連合を牽引してきた。
さらに、日産は16年10月に燃費試験の不正問題から経営危機に陥った三菱自を救済するかたちで傘下に収め、ゴーン氏は三菱自の会長にも就いた。3社連合は17年の世界販売台数が1060万台に達し、トヨタ自動車を抑え、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)に次ぐ世界第2位の座に躍り出た。しかし、VW、トヨタと比べ、3社連合はそれぞれが独立した緩やかなアライアンスにあり、そのままでは指揮系統や投資効率などで弱点なのは否めない。
その意味で、「ポスト・ゴーン」を見据えれば、ゴーン氏の求心力が健在なうちに統合をまとめあげる案が勢いづく。自らの後継者という点をみると、2月19日付で空席となっていたルノーのCOOにティエリー・ボロレ最高競争責任者(CCO)を充てた。日産も17年4月に就任した西川広人社長兼CEOに経営を託した。しかし両氏はゴーン氏に代わって3社連合を将来にわたってまとめ上げられるだろうか。