価格が高いエリアを回れば、効率的に稼げる
ここで特に指摘しておくべきは、ウーバーはテクノロジー企業、「ビッグデータ×AI」企業であるという事実です。社内の環境からして、テクノロジー企業そのものです。機械学習プラットフォーム「ミケランジェロ」を構築し、誰もがAIを活用できるよう、社内の開発環境を標準化しています。
その成果は、例えばウーバーのプライシングに表れています。ウーバーの値付けは「ダイナミックプライシング」。アマゾンや、ウーバーと同じシェアリング大手のエアビーアンドビーがそうであるように、独自のアルゴリズムで需給を分析しつつ、リアルタイムで値段を変えています。これもテクノロジー企業だからできていることだと言えるでしょう。
具体的には、繁忙期に、乗客が多い地域から出発する場合に料金を引き上げる「サージプライス制度」を導入しています。ドライバーはアプリを通じてライドシェア需要の大きい時間とエリアを予測、価格が高騰しているエリアを効率的に回れば、収入を増やすことができるというわけです。
2015年初頭から自動運転技術の開発に着手
人工知能テクノロジーも十二分に活用しています。一例が「ウーバープール」です。これは同じ方面に向かう他のユーザーと相乗りすることで、低料金で乗車できるサービス。この仕組みの背景に人工知能があります。このサービスを運営するには、正確な経路や到着時間を予測することで、どのユーザーを相乗りさせるか、スムーズに算出しなければなりません。ウーバーはここに、人工知能を用いた独自の経路検索エンジンを活用しているのです。
2017年1月には、これまでの数十億回に及ぶ配車サービスを通じて集めた世界の交通データを都市に提供する「ウーバームーブメント」を開始しました。現在は、一部の都市計画当局や研究者のみの使用になりますが、いずれは無料公開されるとのことです。
そして、やはり注目すべきは自動運転です。ウーバーは2015年初頭から自動運転技術の開発に着手しており、2016年の段階で一般道での自動運転テストを実行、これまで320万キロ以上の試験走行を行っていると報じられています。CES2018では自動運転車に搭載するAIにエヌビディアの技術を採用したことを発表、自動運転技術の開発スピードを加速させていることを発表しました。トヨタ自動車も、ウーバーと自動運転を含む新たなモビリティ・サービスで提携をしています。
後述するように死亡事故を起こしたウーバーには安全性の徹底などがより求められていますが、同社は自動運転のキープレイヤーとも目されてきたのです。先にも触れましたが、自動運転の社会実装を進めるには、高コストを高い稼働率で吸収できるライドシェアから入るのが定石だと考えられています。