長期計画は毎年つくり変えるべきだ

わが社の「経営計画書」に記載する「長期事業構想書」は、今期から5年後までの計画です。ですから、これを導入する社長はたいてい、「5年後にまたつくり直せばいい」「長期事業計画は、そう頻繁に書き換えるものではない」と考えます。

ですが私は、毎年、「長期事業構想書」を書き換えています。なぜなら、自社をとりまく状況は、刻々と変化しているからです。

貿易会社や商社であれば、「円高と円安」では客観情勢は大きく異なります。リーマン・ショックのような世界的な不況が起き、日本への影響があれば、多くの会社の客観情勢が大きく変わります。客観情勢が変われば、当然、実績も変わってくるのです。「期待していた事業が思ったほど伸びなかった」「ライバルが参入してきた」「新規事業が軌道に乗らなかった」などの理由で経営環境が変われば、すぐに計画を見直して、対策を講じなければなりません。

私は、年に4回も「長期事業構想書」を書き直したことがあります。中小企業の社長にとって、「朝令暮改」(朝出した命令を夕方にはもう改める)は、ほめ言葉です。なぜなら、それは「社長が経営環境の変化に敏感である証拠」だからです。

目標は、その通りいかないことが大切

社長が「いくらほしい」と決めれば、それが計画の目標額になります。

今期の経常利益が10%増でも、50%増でも、はたまた倍増であっても、「これだけの経常利益を出す」と決めればいいのです。

私は「目標は、その通りにいかないことが大切」だと思っているので、目標の数字を大きく掲げています。

前期の経常利益が1億円の会社が、「対前年比102%」の利益目標を達成(100%)した場合、経常利益は、「1億200万円」です。一方で、「対前年比150%」の利益目標を立て、達成率が「80%」だと、経常利益は「1億2000万円」になります。

利益目標は社長が自由に決められるので、低く設定すれば、100%達成できます。反対に、高く設定すれば、達成できません。

ですが、経営における正しさとは、利益目標を「100%達成すること」ではありません。利益を出すために大切なのは、目標を達成することではなく、金額を稼ぐことです。

私はこれまで、目標を達成したことが一度もありません。目標の数字を大きく掲げ、「過去に一度も達成したことがない」のが自慢です。目標を達成して喜ぶのは、計画が甘かっただけ。「自分が努力していなかった」という評価にすぎないのです。