長男猛反発「お前たちは何を考えているんだ!」

家族会議当日、ご両親は長男がこの場にくるのか心配をしていたが、集合時間の5分前に長男はやってきた。両親、長男、発達障害者支援センターの相談員、FPである筆者の5人が揃ったところで本題に入った。

「本日はご長男の障害年金と仕送りについてご提案があり、お集まりいただきました。まずはお手元に配った現状のキャッシュフローをご覧ください(図表1)。現在の生活を続けた場合の家計収支をまとめています。お父様が定年退職されてから、年間340万円近い赤字がでており、このままでは3年目に金融資産がゼロになります」

そういうと、長男はそわそわし始めた。足踏みをしたり、身体を小刻みに揺らしたり。筆者は長男を刺激しないように、いつもよりゆっくりとした口調で話を続けた。

「現在の預貯金と収入で暮らしていけるだけの生活費を試算してみました。図表3をご覧ください。お父様、お母様、ご次男3人の生活費は月40万円から月23万円に見直していただきます。また、ご長男への仕送り額は現在の月15万円から月3万円となります。この仕送りと障害年金(年78万円)で暮らしていけるように、公営住宅の申請手続きを進めていきます」

すると、長男は急に立ち上がり、「お前たちは何を考えているんだ! 俺がこんな状態になったのはお前たちのせいじゃないか」と、大声で叫び、過去にあった恨みごとを念仏のように話し始めた。

▼父親「俺たちが悪かった。でも、もう暮らしていけない」

母親がおびえていたのはこれか。そう思った瞬間、父親が冷静な声でこう遮った。

「そうだ、俺たちが悪かった。しかし、お前の要求通りにお金を渡していると、あと数年で家族みんなが路頭に迷うことになる。暮らしていけないんだ」

その声に続き、筆者は長男に対して3つの提案を伝えた。長男は2つのキャッシュフローをにらみ付けたが、また母親に対して怒鳴りはじめたので、私は「話を聞いてください!」と声を張った。

それでも長男は「あなたの話は聞きたくない。どうせ生活に困ったら、生活保護がもらえるんだろう?」と反論してきたので、私は生活保護制度の詳細を説明した。

長男が暮らすエリアで最低生活費としてもらえる額は月7.5万円程度。一方、障害年金は月6.5万円程度だが、長男は両親から月3万円の仕送りが受けられる。生活保護を受けるよりも、今回の提案(6.5万+3万円)のほうが受取額は増えるのだ。

そのことを伝え、さらに自宅を売却した場合の試算結果も伝えた。資料に目を通した長男は、小さく「わかった」といい、発達障害者支援センターの相談員と話したいというので、解散になった。帰り際に父親はこういった。

「お前に対して自分たちができることは、家賃を最長2年分支払うことと、二人が生きている間は月3万円の仕送りを続けることだけだ。これ以上は何を言われても何もできない。また、今後お前とのやりとりは俺が窓口になる。母親の携帯は解約する。今後は俺の携帯に電話するように」