商品数を14分の1に削減したら、強みがとがった

──うまくいかない時は、どうしていますか?

【高田】2つありますね。まずそうなる前に種をたくさんまいておく。種を5つまいて2つ咲かなくても、残り3つを一気に広げます。とはいえうまくいかないこともある。だからもう一つは、うまくいかなければ見切って、思い切って一気に変えてしまう。うまくいかない時は、逆に大きく変わるチャンスです。ただ現実には、「せっかくここまでやってきたから」と考えて、なかなか見切れません。僕は「仮説が間違っていても別にいいじゃないか?」と思っています。

永井孝尚『売る仕組みをどう作るか トルネード式仮説検証』(幻冬舎)では、本稿で紹介した仮説検証思考について詳しく解説している。

──高田社長もご就任以来、色々と大きく変えていますよね。

【高田】昨年(2016年)7月、ホームページの掲載商品を約8500点から約600点に減らしました。1/14です。

──一気に減らしましたね。

【高田】ホームページに古い商品が掲載されていたので「これ売れるの?」と聞いたら、「月2個売れます」。一方で新商品を登録するチームは「人が足りません」。月2個しか売れない商品を一生懸命登録するのはもったいないですよね。そもそもジャパネットの強みは「少品種多量販売」で、アマゾンさんや楽天さんの「多品種少量販売」の逆なんです。データを見たら、1000商品で売上の多くを占めていました。じゃあ「厳選」の「選」にひっかけて「千」商品以内にしようと決めて、商品を絞り込んでみたら意外と減って、600商品になりました。ただ上限を決めないとまた増えるので「とりあえず語呂がいいから、最大777商品にしよう」と。

──正確にやろうとすると、逆にやること自体が目的になります。そういう部分はさっと感覚的に決めることも大事ですね。

【高田】会議で「700か? 600か? 800か?」という議論にかける時間はもったいないですよね。そこで大きな差はつきません。「商品数を1/14にすると怖い」と思いがちですが、仮に失敗しても売上の多くは確保されているので、大きな問題にはならないと考えました。

──逆に1/14に減らすことでメリットは?

【高田】まず10人いた商品登録チームを解散できました。仕組み改善を一生懸命やっていたので、「改善せず、そもそもやめよう」ということで別の仕事に回しました。

みんなで議論して意思決定する時間がもったいない

──10人分を他の仕事に回せるのは大きいですね。

【高田】さらにバイヤーが約20人なので、600商品だと一人30商品担当します。バイヤーが自信ある商品だけになりました。そこでバイヤーに「自信があるなら、事前発注しておけば、お客様への納期がすごく短くなるよね?」と聞くと「でも注文がないのに、事前発注はちょっと」って言うんですよ。

──気持ち、すごくわかりますね(笑)。

【高田】「自信あるんでしょ?」「はい」「発注は?」「怖いです」「意味がわからないよ」と言って(笑)。今は全600商品、事前発注していて、自社制作の動画もあります。こうすれば「少品種多量販売」という当社の強みもとがりますよね。

──私も動画を見ましたが、再生時間が45秒なんですね。「1分なら長いけど、45秒ならいいか」と思って見始めたら、面白いので、次々見てしまいました(笑)。

【高田】これも「自分がスマホで見るなら、1分はちょっと長い。45秒かな」という感じで決めました。理論的なベストの再生時間なんて、いくら探しても答えはありません。みんなで議論して意思決定する時間がもったいないですよね。

──日本人は稟議(りんぎ)や根回し好きで、「全員賛成」という状況を作ろうとします。でもそれが目的になって時間がかかりますよね。

【高田】一方で「社長が言うから」となるのは避けたいので、納得できる理由があって「50秒の方がいい」と言えばそれでもいいんです。実際、話しながら変わることも多いですね。